たぶん きっと おそらく ゾンビ  公演情報 トツゲキ倶楽部「たぶん きっと おそらく ゾンビ 」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    現代の演劇界ー特に小演劇への深い愛情に満ちた内容、それをある映画を連想させる演出によって興味を惹く巧さ。表層的にはコメディのようであるが、芯にあるのは現代ーコロナ禍における凄まじい苦悩と危機を、公演は淡々と暴き立てているようだ。何かが崩壊しつつあるが、同時に希望を描くことも忘れない。虚実綯交ぜの展開は、演劇ならではの面白さ。
    (上演時間1時間40分)

    ネタバレBOX

    楽園は二面客席。舞台美術は、出入り口の対角線上に一段高い平台。その横にパイプ椅子があるだけのシンプルなもの。ここはカツゲキ劇団の公演の稽古場光景であるため、芝居用の舞台美術はまだないという設定。

    前説、その途中で口調が硬いと他の劇団員が注意をしつつ、そのまま本編が始まる。劇団員のサクライがまだ来ない。稽古を始めたいメンバーが彼の所在を確かめようとするが、情報が錯綜し真偽のほどが掴めない。彼が劇団内で恋愛している、金に困っているらしいなどの噂や憶測が飛び交う。
    これを受けて、ネット情報の真偽、噂は人心を迷わせる怖さ。何が真実で、どう行動するかは自分の気持ち次第。それが演劇熱への議論へ続く。

    稽古を始めたい舞台監督、なにしろ劇団解散公演なのだ。この舞台監督・円谷(仲澤剛志サン)と若い劇団員・笠井(田久保柚香サン)の演劇に対する気持ち、もっと言えば現実社会×夢・生き甲斐についての議論が、「たぶん きっと おそらく 肝」だろう。「ある年齢になったら演劇を続けて生活できるかどうか、見極めることが大切。年齢とともに大事にする優先順位が違ってくる」。一方、「どんなに生活が苦しくても演劇が大好き、人を生かせる芸術は演劇だ!」と言い切る。作・飛葉喜文さん、演出・横森文さんに、よくぞこの言葉を言わせたと拍手を送りたい。
    居ないメンバーの代役を立て稽古を始めるが、街にはゾンビが出没し、新宿では暴動が起きている。また小田急線が止まっているという怪情報、色々な事が劇場外で起きているらしい。ゾンビの正体とは、政府曰く不要不急の外出はせず、家の中にいるようにと。

    ゾンビの増殖=コロナの感染を連想した。外出制限などは まさにコロナ感染防止対策そのもの。この危機をどう脱するか。登場しないサクライは、小説で映画化もされた「桐島、部活やめるってよ」のように、周りの人々によって人物像が作られる。その現れない人物によって窮地を脱する。始めは悪口に近い言動が、いつの間にか親しみを持っている。しかし女癖は悪いらしいが…。

    上演前も懐かしい昭和歌謡が流れているが、劇中でも「いつでも夢を」「喝采」♪いつものように幕が開き♪など1960~70年代の曲が多く流れる。曲に合わせて皆でダンスを踊る、コミカルなダンスであるが、何となくゾンビのような…(失礼)。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/02/26 00:31

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