Speak low, No tail (tale). 公演情報 燐光群「Speak low, No tail (tale).」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    シアタートップスが小劇場に戻ってきた。
    80年代から今世紀初頭まで(85-09)一階の喫茶店トップスの上にあった劇場には、遊眠社以後の小劇場が次々と登場して、「バブル・その後」の広い層の若者に支持される「トップス演劇」を繰り広げた。
    そのころすでにそれらの若者とは一線を画して社会に強いメッセージをもって下北沢から演劇を発信していた燐光群が、昨年秋から本多劇場が新しく経営することになったトップスの舞台に立つ。坂手洋二は演出に回って、本は詩人の小沼純一の戯曲処女作。ちょうど、トップスがあった時代から今までの小さなジャズバーをメインの設定にしたユニークな舞台である。バブル期にはその前の安保闘争型の若者は去り、ジャズバーで気心の知れた仲間だけに沈潜する若者の時代になり、さらには個人の時代になる。その経緯を自分好みのLPをかけながら見守っているマスター役の猪熊恒和が好演だ。あまり幸せでなかったこの国の一時代を言葉でなく体現している。客たち、古い時代は鴨川てんしと川中健次郎、次の世代は杉山英之、一番若い世代は樋尾麻衣子が軸になって演じるが、いい味を出しているべテランに負けず杉山、樋尾も微妙な時代性を出していて、この劇団の年輪と時代の波を感じる。樋尾麻衣子は、地か、演じているのか分らないが、まさに今の女だ
    舞台はこのバーのクロニクルに、街中の野良猫を見守る近所の女性たちのエピソードと、一家の中で欠かせない犬との交流を回顧するエピソードが交錯する。その構成は多分、坂手が演出とともにやったのだろうが、うまいものだ。話としては猫の話が発展するところがなく後半退屈になるが、全体として、短いシーンを重ねて時代を巧みに描いていて、劇作家としての坂手の円熟ぶりも見られる。思いだしたように政治的、社会倫理的メッセージも出てくるが、そんな言葉はなくても時代批評にはなっている。いかにも、いまの小劇場らしい、時代を敏感に反映する新宿にふさわしいトップスの芝居である。これでこけら落としをやればよかったにと思うが、それはできなかったのだろう。それはネタバレで。

    ネタバレBOX

    幕切れ、このジャズバーは閉店する。これはこれで、坂手らしいアピールにはなっているが、そこをもう一つ新しい幕切れを見せてほしい。ここは常識的だった。

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    2022/02/23 23:34

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