斑点恋慕 公演情報 中央大学第二演劇研究会「斑点恋慕」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    タイトルが「斑点恋慕」であることから、過去・現在の3組の恋愛話が並行して展開するが、ある時に”思い”が交差し人間臭さがリアルに立ち上がる。物語は多少ご都合的なところもあるが、言葉を尽くしても分かり合えない心情シーンは、実に巧みに描いており上手い。

    思いを素直に伝えることの難しさ、同時に一定期間を一緒に過ごした相手(男女)との心地好い距離感をどう保つのか、日常にみられる光景を淡々と紡いだ物語。深まる溝、持て余す気持、それでも時間は流れ続けるから相手との関係がますます隔たってしまう。それをシンプルな舞台美術で上手く表現している。

    欲を言えば、ありふれた光景(単調ゆえ)にもう少しドラマ性を盛り込み、観客の感情を揺さぶってほしいところ。また演技に関して、台詞(読み)のままであったり、感情のこもった言葉(会話)になったりと安定しないところが気になった。

    中央大学第二演劇研究会の公演を観るのは2回目。前回は「ふぐの皮」(2017年9月)で、池袋演劇祭参加作品であった。その時のイメージは、正攻法的で真面目といった印象であったが、本公演も同様(そういう作劇 伝統なのかな)。
    (上演時間1時間30分)

    ネタバレBOX

    正面が一段高く、真ん中に半円柱が立ち、上手下手にそれぞれ持ち運び可能な黒枠がある。奥は暗幕、その前をビニールシートで遮っているから、照明で微妙な彩色を帯びる。

     冒頭は丸座折りたたみ椅子を持ちながら人々が交差するように歩く。まだ誰とも知り合いではない、日常の街中の歩行もしくは生活風景が観える。
     ストーリーテラー役でもある会社員・麻田直(塩谷みづきサン)が、半円柱の後ろに回り込み、自分が履いていた赤いハイヒールを脱ぎ上(展望台)から落とす。その光景は後々へ引き継がれる。彼女と同棲しているのが古本屋バイトの倉橋悠貴(伊織サン)。知り合ったのは、悠貴が直をモデルに写真撮影をし、それが縁で直が悠貴に付き合ってほしいと告白。が、いつの間にか悠貴はカメラマンになる夢を諦め、といった態度に苛立つ直…と解釈したが、実は判然としない。
     直は、偶然 喫茶店で高校時代の友人だった女優の三好朝陽(小林悠花サン)に出会う。2人はダンス部で仲良しだったが、朝陽が突然海外(ドイツ)留学してしまう。その留学先で、悠貴と朝陽は(元)恋人同士だったという、出来過ぎたというか よくある設定か。
     さらに3組目は、イラストレーターの我妻萌香(早田菜々恵サン)と会社員・金子慎太郎(中村恭介サン)。彼女はお菓子作りが趣味で、彼のために尽くしている。一方、慎太郎は会社の仕事がうまくいかず落ち込んでいる。彼が本当に食べてくれているのか確かめるため、不味いクッキーを渡すが、そこに自ずと不信感が表れてしまう。尽く(試)す彼女、気づけない(自分本位な)彼氏、思いのすれ違いが2人の関係をギスギスさせ、ますます気まずい関係になっていく。

    直と萌香は、別々だが偶然に海を観に…。帰りのタクシーの中、迎えに来た慎太郎を交え、それぞれの思いを吐露するうちに、誤解や気づきが出来ない状況であったことを思う。タクシー運転手 曽根周(ハンコ屋サン)の朴訥な言葉が印象的だ。すべての誤解や勘違いなどが氷解したかどうかは分からないが、そこそこ元の鞘に収まったような。底流には人と人との関りが、生きる上での”張り”であり”希望”に繋がるといった思いが伝わる。いつまでもラブラブといった幸せが続くか、それを持続可能な恋愛に出来るかは、それぞれの思い遣り次第。我儘や意地・虚勢を通せば、二度と戻れない過去の恋愛になってしまう。そんなことを正攻法で”ちょっと思い出させる”物語。先の赤いハイヒールは海に捨てたはずだが、これは夢だったのか気になる。仮にそうだとすれば技巧的過ぎると思う。

    舞台美術はシンプルであるが、椅子や黒枠を適宜動かし、情景や状況を上手く表現させる。例えば、タクシーのドアを思わせ、その開閉によって車内と外気という空気感が違う。もちろん椅子の置き方によって喫茶店内、ブランコやタクシーの座席にもなる。舞台を作り込まないことで光(風)景に捉われることなく、逆に心象劇としての内面が浮き上ってくる。そこに「大学生公演」らしい瑞々しさを感じた。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/01/15 17:04

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