東京卍メロス 公演情報 E-Stage Topia「東京卍メロス」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    「走れメロス」(太宰治)と「東京卍リベンジャーズ」(漫画、映画化)を融合したパロディのように思えたが、やはり独自の作劇だ。公演の魅力は、個性的な人物、アップテンポな展開、凄い躍動感(走る 以外に喧嘩、舞踊等、とにかく身体を動かす)という三拍子揃ったところ。

    家族や友人をも恐れ、幼い頃から道化を演じ、他人の評価にビクビクし、人から見捨てられることが不安でたまらないのが太宰治のイメージだとすれば、この物語では少し違う人物像ー関東白虎組組長 虎島鉄州を登場させる。粗筋は「走れメロス」を思わせるが、そこに敢えてのタイムリープ感、そしてヤンキー要素にSFやアクション要素が合わさった作劇。観客を飽きさせず、物語に集中させる手腕は見事!
    (上演時間2時間 途中休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台セットは二段で、上手 下手に昇降する階段がある。同じように正面 左右の側面に剥き出しのパイプのようなオブジェがあり、何となく廃墟であり道路(行程)のような気もする。下段板には赤い直線が描かれ、運命の赤い糸であり 同時にこれも道路を表しているよう。シンプルな作りであるが、走る・ダンス・格闘等多くのパフォーマンスがあるため大きくスペースを確保し、舞台の昇降によって躍動感を生む。

    舞台は東京・八王子市で、今では関東白虎組が友情・恋愛といった仲良くしている友人・恋人同士を見つけると暴虐を加える。これに激怒した米良進(長濱慎サン)が、組に殴り込みをかけるが、返り討ちにあう。米良には妹の結婚が間近に控え何とかして出席したい。そこで3日間の猶予をもらい、乗り物を利用せず新小岩に向かう。その間 友人・芹澤に自分の身代わりを依頼…といった内容だが、これは走れメロスそのもの。「走る」は、米良自身も以前は暴走族総長であり、密かに思いを寄せている女性もレディース総長。色々な場面で”走る”に関わりを持たせており、それを物語の見せ場にしている。

    一方、妹の結婚相手の男性の素性が…。こちらも謎に包まれて といった興味を惹く設定。張り巡らせた”意図”が、運命の赤い”糸”のように手繰り寄せられ大団円へ。この走る仕打ちは、何となく仕組まれた 云わば狂言のようなもの。人は誤解と錯覚で人間不信に陥ることがある。そこを出発点とした走る行為の帰結は、自ずと原作通りの誤解を解き友情・愛情を気づかせるというベタなテーマが透けてくる。物語は人間の心理、分析または観察を深く掘り下げるといったものではなく、あくまで面白可笑しいコメディとして観(魅)せる。だからトランスジェンダーという設定やビジュアル的にアイドルやメイド(喫茶)を登場させ、さらに劇中アイドル曲「LOVEバトン」で楽しませる。

    信じることの大切さと同時に、自分自身の気持に正直になること。衒いや恥ずかしがり、あるいは友人のためといった虚勢は、本当に大切な人を失う。ラスト 渋木美沙さんの「そこは譲れない!」という思いがもう一つのテーマであろう。因みに虎島組長も誤解で25年?も相思相愛の人と一緒になれないため、人間不信へ。
    冒頭、友人・恋人が親しく出来ず、一定の距離感(間)を保つのは白虎組が押し付けたルールであるが、その光景が何故かコロナ禍で、演劇も、社会も大きく変わってしまった。しかし、人の思いはいつの時代でも変わらず”親密”であると…を思わずにはいられない。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2022/01/14 18:56

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