ネモフィーラ 公演情報 演劇ユニット小雨観覧車「ネモフィーラ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    描きたいことは分かる。主人公と演劇ユニット小雨観覧車の主宰で作・演出の山野莉緒さんの思いが重なる物語である。その意味では等身大で、今の心境を如実に表していると言える。悲しみと温かさが隣り合わせにあるような…滋味溢れる公演。

    自分と相手が思い描いている世界観が違うことはよくあること、思いが上手く伝えられないもどかしさ、焦りがヒシヒシと伝わる。その心情は、手紙のようにしたためた当日パンフ、そして上演後(涙の)挨拶から明らかだ。しかし公演(物語)としては もう少し掘り下げた説明が必要だろう。
    (上演時間1時間20分)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、中央暗幕の前に横長ベンチ、上手・下手に複数の鉢形(水)桶、下手に玩具の滑り台。これは池袋の街中風景であり、花屋や公園もしくは街路をイメージしている。シンプルであるが、物語は心象風景であり、タイトル「ネモフィーラ」を表すための花(屋)を強調している。

    物語は、自他ともに認める天才音楽家である清瀬涼香(山野莉緒サン)が、公園で何かに悩んでいるところへ お兄ちゃんと呼ぶ津田孝浩(山岸大起サン)が現れ取り留めのない会話から始まる。涼香は売れっ子作詞・作曲家であるが、何故か楽曲の提供のみ。「演劇」を「音楽」に置き替え、主宰(リーダー)という立場がメンバーとの軋轢・葛藤等を生じさせる、を描く。が「立場(もしくは地位)が人を作る」と言われるように、どの世界も同じかも知れない。
    一方、毎日花を買い求める孝浩、その行為に興味を抱く花屋のバイト・大野千春(トギナナミ サン)、その花屋の店長・田村麻優(やまだ まやサン)はしっかり者だが、少し翳があるようだ。

    物語は、涼香周辺と花屋という2つの場所で紡がれる。或る日 涼香が失踪し、偶然 花屋で麻優と再会したところで、気持が大きく揺れ動く。心情を描く物語の中で、静かに客観的に見つめる人物が必要。その役割を涼香のマネージャー・佐久間史織(二川あおいサン)が担っている。淡々と仕事を請け、スケジュール管理を行う姿は、どこの組織にもいるような普通(普遍)の人物。その存在によって、心情という掴み難い話に追い込まず、人(誰も)が抱える悩みや苦しみといった普遍性あるドラマに仕上げている。

    当日パンフに、山野莉緒さんはこの作品のことを”遺作”と書いている。「10年続けたお芝居ともお別れです」と。昨年11月に同名公演が事情(コロナ禍の影響?)によって中止になり、改めて挑んだ本公演だが…残念である。ちなみにネモフィーラの花言葉は「成功」だが、別に「許す」といった怖さも表す。タイトルに「後日譚」とあるから中止した公演内容とは違って、(改稿後は)より心情表現に近くなった、と推察する。

    分かり難いのは、涼香、麻優、孝浩の関係。女性2人は天才・凡人といった台詞から音楽活動を一緒にした仲間と分かるが、孝浩と涼香、孝浩と麻優の夫々の関係が判然としない。さらに毎日花を買う理由は何か、麻優に会うためか?3人で音楽活動をしていたが、才能・音楽性の違い・人間関係等で解散したのか、もう少し説明を加えてほしいところ。

    「遺作」ではなく、次の公演までの一時的「休作」と思いたいので、敢えて次回公演も楽しみにしております。

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    2022/01/10 13:46

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