怪勿 - monster - 公演情報 The Vanity's「怪勿 - monster - 」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    御用(仕事)納め。今年は、新型コロナに関わる応援業務で多忙を極め、休暇を取得し難い状況であったが、今日は午後半休をとり観劇。
    今年もそれなりの本数を観劇したが、音楽劇と銘打った公演はわずかである。そして出演者3名で3役全てを演じ3バージョン上演する試みというか挑戦に興味を持った。当日パンフにThe Vanity's 主宰・瑞生桜子女史が、「全く違う個性を持った3役を同じ役者が演じ分けていく面白さと、組み合わせが変わるとこんなにも違った作品に見えてくるのか・・」と書いている。自分は「Bチーム」を観たが、その印象が違って観えるのだろうか。
    チラシや説明では、「私お母さん殺してきた」という衝撃的な告白 とあるが、その心境に至るまでの心情表現と状況描写が弱いのが勿体ない。3人の2001年から2021年までの20年間を1時間の中で紡ぐには無理があった、と思う。「母娘、友人、夫婦の"共依存"がテーマ」であるが、出来れば先の衝撃的な告白をした女性(母娘関係)に焦点を絞った物語にしたほうが分かり易い。
    (上演時間1時間) 【Bチーム】

    ネタバレBOX

    舞台美術は、3人が居た児童養護施設「希望園」跡地の公園という設定。因みに上演前(施設)は小鳥の囀り、上演後(跡地の公園周辺)は車の走音が聞こえ、時の違いを表しているようだ。上手奥にピアノ、手前(客席側)にブランコ、中央奥に木(張り子、切抜き?)、下手奥に3段の台座(ジャングルジムであり地下室イメージ)、手前にベンチ。冒頭、ミホ(岡本華奈サン)が「私お母さん殺してきた」という衝撃の告白。ピアノの乾いた音が不気味に響く。

    2011年12月30日深夜の公園。10年振りに再会したミホ、マリア(音羽美可子サン)、ミサト(瑞生桜子)が近況を話し出す。この日はミホの20歳の誕生日でもある。まだ何者にもなっていない彼女たち、希望を語り施設で遊んでいた時の遊戯(缶蹴り)で無邪気に遊ぶ。
    2001年12月30日(10年前)、ミホが実母に引き取られ施設を出ていく時に、3人がタイムカプセルに将来の自分に向けた手紙を入れる。それから10年、今(2011年)のミホの実情は不明だが、後々明らかにされる。マリアは大学生で、それなりの男性と結婚し24歳くらいで子供を産みたいという現実(保守)的な考え。ミサトはデザイナーとして活躍したい。2021年12月30日、2人はそれなりに幸せを掴んでいるようだが、実は…(広げ過ぎて欲張った描きのよう)。

    ミホは、二重人格(昼と夜の顔)の母の元…虐待を受けながら育つ。母はミホを地下室に軟禁し、売春相手を探す顔見せのため、週一回礼拝に連れ出す。ミホの唯一の望みは、マリアとミサト(10年振り)に会うこと。それが叶えられなかったから…というには時間軸の長さに対して心情と状況の説明が不十分で感情移入がし難い。軟禁し虐待されているミホの一人表現、その狂おしい姿は解る。しかし、後景の木を回りながら代わる代わる 3人が台詞だけで1年刻みの情況を説明しても心に響かない。登場しない「怪勿」をもう少し具体的に立ち上げるか、もしくは虐待の凄惨さがイメージできる出来事が必要。

    音楽劇としては、冒頭こそ怪しく不気味な効果(ピアノ)音であるが、本編で役者が歌う場面は心情表現で、もちろん皆さん上手である。声質が違うためハーモニーは実に心地良い。
    ミホの衣装が、12月にしては白の薄着。この衣装に薄幸(軟禁)もしくは特別な思いのイメージを重ねているのか、違和感を覚える。The Vanity'sに込められた、”虚栄心、うぬぼれ、儚さ”は十分に伝わる。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2021/12/28 18:26

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