マンホールのUFOにのって 公演情報 マチルダアパルトマン「マンホールのUFOにのって」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鬼才・池亀三太氏の世界観を堪能!
    独特な世界観に翻弄され、流されないようにしがみ付くか、いや 黙って流されたりしたほうが楽しく観ることが出来る。この作品のユーモアには洗練された感覚がある。
    表層的にはSFファンタジー風でありながら、どこか日常の光景ーー男子大学生のあるある行動といった見かける姿に親しみを覚える。主に前半は、男性目線、後半は女性目線であるが、全体を通して観ると、何故か甘酸っぱくも ほろ苦い青春グラフティといった印象。斜め上を行った奇抜さはあるが、終始 瑞々しい感覚的水準を保っていることに感心した。自分好みの作品である。
    (上演時間1時間45分)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、中央に大きな円形台、上手に別スペースがありベンチが1つ。周りの壁にはスナックや探偵事務所名が入った看板があり、或る街の光景を演出している。この雑多さがグラフティ(落書き)と思わせる。もちろん、円形台はUFOに見立てたマンホール。この上で別世界・別次元への飛行を妄想する。しかし覗いてみれば(覗かないけど)下水溝がある、という現実。これが前半・後半(男・女)の物語に通底する”物事”を指す。

    この街の大学に通う、前半の主人公・へちま(宮地洸成サン)がUMA(謎の未確認動物)研究会に入部したり、偶然出会った後半の主人公・遥(松本みゆきサン)との奇妙な付き合い、コンビニ近くで知り合った女暴走族、遥の友人で気の強い女(後々、暴走族総長と分かる)と次々と知り合って行く。そして好みの女性がいればナンパもするという いたって普通の大学生の姿。時々、擬人化した犬や猫が現れSFファンタジーの様相を見せるが、UMA研究会というクッション(台詞にもある)を通して、人間=地球人も宇宙全体から捉えれば宇宙人、地球の生命体に区別など必要なかろうと言った大局的な観せ方は鋭い。現実とSFファンタジーの混在が実に巧い。

    後半は、15年後の同じ街。へちま は街を去ったが、遥は相変わらず住み続けている。が、すっかり大人になった遥は何の変哲もない日々を過ごす。そんな時、暴走族総長だった むらさきが刑務所から出所してきた。昔話に懐かしさを覚えるが、以前と違い足を地にしっかりと着けて生きている。現実を手に入れたのか、夢を取り零したのかは分からない。
    偶然、へちま との邂逅。彼は他の街で遥の知らない女性と”普通”に結婚していた。へちまの地に足を着けた現実、遥のまだ過去を引き摺っているかのような描きが対照的だ。

    物語の観せ方も、ポップでクール、ベタでシュール、エンタメでアートといった相反するものが融合しているような感覚だ。一見、奇想天外に思えることでも不思議と受け入れてしまう面白さがある。夢だけでは生き難い現代社会の歪、しかし夢が無ければ面白味に欠ける人生、バランスを観せられたような気持だ。ただせっかくの えにしのギター、存在感があるのだから、もう少し効果的な活用が出来なかったのか、勿体ない。
    自分的には懐かしき共感! ニヤニヤ系の笑いは、心と体にそっと寄り添うサプリメント・ドラマと言ってもよい、と思う。
    次回公演(来週)も楽しみにしております。

    0

    2021/12/23 12:17

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大