実演鑑賞
満足度★★★★
メチャクチャ面白い。超満員の客席、高いリピート率、もっと大きな箱でやっても良いのでは。口コミの熱気に嘘が無く書かれた言葉の通り、喜劇としてもかなり笑える。登場人物一人一人のキャラへの描き込みが半端なく、普通の舞台なら「この人主演で一本行ける」ネタを惜しげもなく何本もぶち込んでいる。帰り道、観客達の幸福な会話が下北に溢れ返る光景。「舞台って面白いなあ」としみじみする。
タイトルの『ぶっかぶか』とは、サイズの合わない大きすぎる外的自己を押し付けられてどんどんストレスが溜まっていく内的自己のことであろう。
舞台は妹夫婦の経営する小さなペンション、そこに居座る兄のエピソードからスタート。兄・牧野耕治氏は西田良や郷鍈治を思わせる強烈な風貌、ズカズカ無神経に振舞う口上は近田春夫を思わせる。妹夫婦は矢鱈巨大な香月健志(かつきたけし)氏と本格的なカーフキックを見せる天野弘愛(ひろえ)さん。兄と妹夫婦の遣り取りがモロ『男はつらいよ』で、「この駄目な兄の話だな」と思わせるが実は全然違う。そこを訪れる宿泊客達の抱えるエピソードは予想もつかない突拍子のないものばかり。圧倒されつつ、人の想いの織り成す不思議なハーモニーにじんわり浸されていく。
漂泊民、三谷健秀(たけひで)氏のキャラは一本の映画のようで、よくもこんな人物を創造出来たものだ。日本人離れした雰囲気は外人が演じているのか?とも思った程。浅井健一の詩のような人物像。