ダウト 〜疑いについての寓話 公演情報 風姿花伝プロデュース「ダウト 〜疑いについての寓話」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    英語戯曲作品の翻訳・演出を得意とする小川絵梨子女史は本作でも本領発揮、題名が示すように疑惑の真偽を探るミステリーでもある本作の持つポテンシャルを最大限に引き出し緊迫感十分であった。主役、と言って良いだろうシスター(学校長)役・那須佐代子と、神父役・亀田佳明が疑惑を巡って火花を散らし、新人シスター(教師)役・伊勢佳世、生徒の母親役・津田真澄の貢献も目に焼き付いた。
    映画版を観た印象というのが今一つであったので、それほど期待はしていなかったが収穫であった。

    ネタバレBOX

    元々舞台のたに書かれた脚本で、映画版は作者自身が脚本化・監督し、脚本は映画仕様に随分書き直したらしい(web記事より)。ラストでどんでん返しがあったと記憶するが、それがうまくハマらず「おや?」と寒くなった。「破線のマリス」という邦画のラストで感じた論点ずらし(感動話にシフトしてしまい肝心の謎が置いてけぼり)に似た・・。
    だが舞台は微妙なニュアンスも含めて細やかに整理された演出で、ストーリーが明快に伝わった。
    ただし観客が最終的にシンパシーを寄せる校長の信念が果して「正しい」と言えるものか否かについては、多様性が言われる今は少数派にならざるを得ないのかも知れぬ。存在の承認こそが成長と発達の起点である、という私も信じている視点からすれば、校長の方針は「時代遅れ」とも。もっともこの芝居に関しては校長の判断が正しいとの仮説をとるが、ミステリーとしての面白さとは別に、ドラマは一つの問いを投げている。

    他の学校から転任(転職)してきた新人シスター(教員)に対し、校長が掌を加えず厳しく対する芝居冒頭のやり取りから見事で、「教え」「愛する」教員の仕事にやり甲斐を見出だす新人に校長は「要は注意深くある事」と言う。そこには万人に対する「疑い」が込められているが、今その最大の的が神父であり、中盤、そして終盤での校長による追及と反論する神父の厳しい応酬から「真相」が少しずつ浮かび上がる。

    0

    2021/12/07 01:59

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大