クラッシュ・ワルツ 公演情報 演劇集団池田塾「クラッシュ・ワルツ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    第19回劇作家協会新人戯曲賞受賞作品 (刈馬カオス氏<刈馬演劇設計社>)。
    物語は3年前の交通事故をめぐって関係者、一見関係ないと思われる夫婦も加わって、それぞれが抱える秘密と悲しみ、やる瀬無さを感情の赴くままに激突させた会話劇。脚本の面白さはもちろんだが、物語を支えているのは5人の役者達の迫力と緊張感ある演技であろう。
    (上演時間1時間15分)

    ネタバレBOX

    舞台はイガラシ家の和室(座敷)。上手に押入襖、下手が出入りする襖、中央に大きな座卓、壁側にミニ書棚、TVや座布団等が置かれ、物語を紡ぐには過不足なく作り上げている。

    冒頭、この家の主婦・イガラシ タエ(飯田 問サン)が強引にクドウ リツコ(のりほサン)を家(和室)に連れ込む。何が何だか解らない彼女に向かって、今日は(交差点に)花を供えないでほしいと頼むところから物語が始まる。彼女は3年前に交通事故を起こし5歳の男の子(ケンタロウ-登場しない)を事故死させ、以降 毎日白い花を供えている。タエはこの女性を被害者・男の子の母親と勘違いした。この家(窓)から事故現場である交差点が見通せるという設定である。冒頭こそ、ドタバタとコミカル風に描いているが、そこに少年の母親・タケイ チハル(梶原生吹サン)そして離婚した元亭主(父親)・ミタ リョウスケ(田辺学サン)が登場し、直接の加害者・被害者が相対する構図へ。同時にこの家のイガラシ マサオ(もろいくやサン)が、この家を売却するにあたって事故に関わる悪評で、業者から買値を値切られている。それぞれが自分の事情や思惑を押し通そうとするが、もっともと思われる議論が綱引きのように…。1つの事故を巡り、交わるはずのなかった人間関係が生まれる。ぐるぐると回る濃密な会話劇は、それこそ奇妙なワルツそのもの。

    人物描写…タエは、事故のあった交差点は人や車の往来が激しいわりに信号機もなく、危ないと思っていた。その危険を知らせる活動をしなかった(不作為の)後悔、自責の念。夫マリオは、何とか高値で売却するため、悪評の元である花を供えるのを止めてほしい。一見自己中心的と思える言動であるが、それはタエ(妻)のためという秘密を抱えている。リツコ(加害者)は花を供えることで贖罪しているかのようだが、チハル(母親)が一度も花を供えないことへの抗議のような気持。一方 チハルはリツコの行動を監視しており、事故以来、彼女の様子が激変したことに危惧を抱いている。リョウスケ(父親)は、リツコを絶対許さない、イガラシ家の売却減は彼女に補てんさせると主張。それぞれの正論らしき主張、しかし それが容易に収まらないという感情の衝突が見所。時に座卓を叩き激高する姿、また座敷に頭をこすり付ける謝罪姿といった、感情と行為の振幅が激しい演出は観応えがあった。それを役者陣は、キャラを立ち上げ、立場を鮮明にした見事なまでの表現、その演技に引き込まれた。

    舞台技術として、隣家の子供が弾いているピアノ練習曲ー花のワルツーが、たどたどしいが、騒音とも 少しずつ上達しているとも思える。人の心の持ちようによって受け止め方が違う。そして音が聞こえないと心配という人の心の変化が登場人物の心情と重なるようで巧い。ラストは夫婦で踊るたどたどしいワルツがホッと心を和ませ余韻を残す。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2021/12/04 16:38

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