ME AND MY LITTLE ASSHOLE 公演情報 藤原たまえプロデュース「ME AND MY LITTLE ASSHOLE」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    普通の人ばかりが登場するが、心の内を見せられると不思議と親近感を持ってしまう。その日常風景は、大いに笑えた!
    或る小さな建築事務所という設定が妙。少人数ゆえに逃げようがない人間関係は緊密だが、そこは重くせず軽妙に描く。あるだろう、いや絶対ある 人間の「建前」と「本音」を実に巧みな演出で表現し観客の共感を誘う。
    少しネタバレするが、劇中で「神は細部に宿る」という台詞があるが、この公演も舞台美術が建築事務所であり、自身の心の中であり また人間関係の隙間(距離感覚)を表してお洒落だ。またキャストの演技もなかなか細かい仕草があり上手い。
    (上演時間1時間30分)

    ネタバレBOX

    舞台美術は個人建築事務所内、所長も含め所員は4人。机、パソコンは木の枠だけで中身(液晶画面)はない。もちろんマウスや電話も木製で、所々に観葉植物を置くという拘り。舞台美術の枠だけで中身がないのは、外観から建前と本音を示している。下手の壁に掛けられている時計にも長短針がなく、時間に関係なく感情が揺れ動くと。公演は一見軽妙だが、音響や照明といった舞台技術を駆使せず、人の感情を真摯に捉え 前(全)面に出した力作と言える。

    上手の壁には社訓に準えた「鳥・蟻・魚・蝙蝠」を形どった掛物があるが、大所高所からの俯瞰した目、細部を観察する虫の目、時には逆さになり素人目になることも大切だという。毎朝の朝礼は会社組織ではよく見られる光景だが、その朝から建前と本音が強烈に炸裂する。会社、仕事とは関係ない個人的な事柄を引きずり、それを押し隠し仕事人間を演じる狡猾さ。しかしその人間性に何故か滑稽で愛らしくもあり親しみを覚えてしまう。

    1役2人で、演じる上で前者の建前と後者の本音をそれぞれのキャストが対になって演じるが、建前はあくまで無難で表面的な台詞だが、内心の本音は罵声・小馬鹿にした毒舌を容赦なく浴びせる。スカッとし溜飲が下がる思いだが、それだけ自分の気持に寄り添っていたということ。
    木枠だけのセットだから、相手の顔は見えているはずだが、実物のパソコンが眼前にあるという前提で、少し顔をずらし会話する細かい演技がリアル。

    一人ひとりの個人的な事情(背景)もしっかり見せ、物語の土台を築いている。所長は家庭の事情や所員の仕事振りに苛立ちと不満を持っている。お局的女性所員は夫との関係に欲求不満を抱え悶々としている。お調子者の男性所員は女のことで頭が一杯、そして新人所員・純子は真面目だが 自分に自信が持てず悩んでいる。皆が表面的には仕事をしているが、無難にやり過ごす日々に経営を担う所長が怒りを爆発させ…。
    実は所長の穏便な なあなあ という態度こそが、皆の本音を引き出せずにいたよう。ここに建前と本音の使い分けの難しさが表れている。

    唯一、棟梁だけが1役1人で出番が少ないと思っていたが、まさか あんな応援姿を見せるとは、そして新人の純子に「あんたこの仕事に向いていない」という辛辣言葉の真意が ・・・そこかとツッコミを入れたくなるほど笑えた。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2021/11/19 15:35

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