黄昏川を渡る舟 ―甘寧と凌統― 公演情報 ワイルドバンチ演劇団「黄昏川を渡る舟 ―甘寧と凌統―」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    千穐楽観劇。
    公演の魅力は物語の分かり易さ、それをアップテンポにして観せる。その中心が殺陣シーンで迫力があった。三国志と言えば「赤壁の戦い」が有名であるが、もちろんその場面もあるが、そこはサラッと流し、タイトルにある2人の武将の因縁と葛藤を心情豊かに描く。物語に芯を持たせた展開が、複雑な史実に一本筋をつけた。
    なお、千穐楽のため多少疲れたか、台詞の噛みが気になった。

    芝居以外で良かったのが、当日パンフに甘寧と凌統をはじめ登場人物、用語の紹介、関係図を配付し上演前に目を通すことができる。それが物語の展開を補足し分かり易くしている。
    (上演時間2時間10分 途中休憩10分)

    ネタバレBOX

    舞台セットは、上手・下手にそれぞれ1台ずつ低い階段台が置かれており、後方上部に破けた布(旗のイメージか)が掲げられているのみのシンプル(ほぼ素舞台)なもの。大きくスペースを確保するのは殺陣シーンを存分に楽しませるため。階段台は国であり陣地、城をイメージさせるが、同時に高い場所(権威であり睥睨姿)からの武威を表す。

    物語は、中国の三国(魏・呉・蜀)時代、海賊上がりの甘寧(東條瑛サン)は、武将として生きる道を志し、江夏太守の黄祖に仕え、呉軍と戦った。その時、呉の武将・凌操(凌統の父)を討取った。しかし黄祖は甘寧に恩賞を与えず、一兵士として扱う。江夏の都督である蘇飛の計らいで呉へ仕官する。そこには父を殺された凌統(髙木陵斗サン)がいる。
    この時代、国家統一を目指す覇権争い、国の存亡を掛けた戦いで私情は許されない。呉の君主・孫権はまだ若く国内情勢は不安定なまま。そんな国情の中で有能な2人の武将の争いは避けたい。迫る魏との戦いを前に、中華統一までは何とか友好関係でいるように説得するが…。

    衣装はソレらしく、殺陣で使用する武器も半月刀、戦斧、弓矢等と多種、視覚で楽しませる。もちろん武器が違えば攻防(アクション)も違い、場面毎の変幻自在な殺陣シーンはスピードとパワーに溢れ舞台狭しと躍動する。同時に台詞も付くので役者の演技は大変。殺陣シーンは相当稽古したと思われるほど 長く観せる。史実にも記載があるようだが、江夏太守・黄祖との戦いに勝利した時、戦勝祝いの宴で凌統が剣舞を舞い、その中で甘寧を殺害しようと企てる。敢えて剣技(戦闘)と剣舞(様式美)という違いを観せる演出も巧い。史実を上手く織り込み、物語の観せ場を次々と挿入し展開させる。2時間10分はそれほど長く感じない。

    舞台技術…音楽は上演中の殺陣シーンではアップテンポなピアノ音、そして和太鼓等で戦意の高揚を促す激しい音が鳴り響く。もちろん刃音の効果音と相まって迫力を増す。逆に休憩時には胡弓の静かで優しい調べが流れ、心を落ち着かせる。照明は強調場面ではスポットライトで人物の心情を照らし、殺陣場面では点滅照明で慌ただしい戦場を映し出す。物語の要所要所をしっかり支える舞台技術も見事だ。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2021/11/07 22:09

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