暫しのおやすみ 公演情報 劇団競泳水着「暫しのおやすみ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    「働くこと」「休むこと」そして「新たな出発」を淡々と繊細なタッチで描いた物語。観終わった後は涼風が頬をそっと撫でるような心地良さ。
    舞台の特徴は、上手・下手側に違う場面を設えているが、人も状況も交わらない。いや唯一ヒロインの女優・染野藍(鮎川桃果サン)だけが行き来するが、それは時が異なるため。無理な展開で紡ぐのではなく、日常のありふれた風景を観せる。大事件や刺激的な出来事は起こらないが、人の心に優しく寄り添い、潤いある「時間」を観せる良作。自分は好きである。
    先に書いてしまうが、「休むこと」は楽しかったと言い、けっしてネガティブにならない。「心」と「体」の休養は明日への活力。どんな業界・世界にも当てはまるのではないか。日常的な話だが面白い!
    (上演時間1時間40分)

    ネタバレBOX

    セットは、上手側に染野藍の姉宅のダイニングキッチン、下手側がTVもしくは映画の撮影現場の控室。客席側に長椅子1つあるが、心療内科といったイメージ。それぞれの場所は独立(色調と段差で相違を強調)しており、基本的には行き来しない。が、藍だけは冒頭の芸能活動をしていた時と人気絶頂で活躍していた当時の回想シーンとして現れるだけ。

    物語…藍は不倫報道によるバッシングで休業、もう1人の後輩女優・藤村みなみ(菊原結里サン)はスタッフとの関係がギクシャクし休業、という”暫しのおやすみ”期間の出来事を藍の家族等、みなみ の芸能関係者、といった身近な人々との語らいを通して癒されていく。2人は女優という仕事は辞めない。続けるための「休む」は、立ち止まること、何かまたは誰かに追われる 追い越されるといった怖さへの励ましの言葉。息切れしたら休む勇気も必要だ。上野友之氏の脚本は、少し厄介な問題を突き付け、悩みもがき苦しませるが、それを何とか乗り越えさせる優しい眼差しがある。

    舞台技術、特に照明は物語におけるその場の雰囲気を端的に表す。暖色・冷色といった多彩な照明光と明暗、その諧調は実に心象的。また11名の登場人物のうち、女性は8名と多く、シーン毎に衣装を変えており、何となく華やか。そういえば衣装助手・絵里(今治ゆかサン)が、撮影に使用する衣装について無理難題を言われ、仕事を辞めようかと思った、という台詞があったが、まさにこの舞台のように思われたが…。
    ナチュラル演技というのか、実に自然体だ。なんと息のぴったりあった会話と動作。ラストは、頑張り続ければ道は開けるというハッピーエンド。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2021/10/08 00:18

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