ヨコハマ・ヤタロウ~望郷篇~ 公演情報 theater 045 syndicate「ヨコハマ・ヤタロウ~望郷篇~」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    理屈抜きに楽しむ人情+風刺を垣間見せた娯楽痛快活劇。当日 劇場外は台風、物語は「砂嵐と雷鳴が轟く」という破天荒さ。堪能した!

    「掘りだしモノ!」「絶滅危惧種!」と大好評だった痛快作が、横浜に帰ってくる!」の謳い文句通りの面白さ。「ハマの弥太っペ」(2018.1)「ヨコハマ・ヤタロウ」(2019.1)と続いてくるが、はじめの「弥太ッペ」という名から、昭和の名作「関の弥太っぺ」(長谷川伸)が下敷きになっているようだ。またマクベスの3人の魔女の予言を連想させる神秘性で魅せ、さらにウエスタン調の活劇で観せる、単なるリリシズムではない振幅がある。
    風刺としては、奥行きと高さのある舞台の長所を活かし、権力構造を舞台美術だけで演出する。主人公・ヤタロウと敵対するヨコハマ市長の豪華椅子と睥睨する姿が権力そのもの。辛苦の泥水を飲んできたヤタロウと対照的な描き方だ。

    (上演時間1時間50分 休憩なし)

    ネタバレBOX

    舞台美術、場所は銭湯「松の湯」、中央奥に開閉するスクリーン幕と広階段、上手側にはカランと桶など、下手側には暖簾戸と縁台。全体的に寂びれたというか廃墟のような雰囲気が漂う。冒頭、正面スクリーンに物語の背景や概況の説明が映し出され、物語が始まる。時は20XX年。某国から飛んできた旧型ミサイルで、関東平野は荒野と化し無秩序状態。その地に最悪最強の「ウォリアーズ」という集団が跋扈し、ヨコハマが犯罪都市になっている。ヤタロウ(今井勝法サン)は、そのウォリアーズに妻を殺された、元オリンピック金メダリスト(射撃)である。妻の復讐のため殺した相手は50人超。そして殺した相手のやり残したこと(望み)を背負い、約束を果たすために苦闘している。しかし、50人超の1人ひとりの望みを描くわけではなく、「関の弥太っぺ」にも出てくる妹であり、娘という女性をこの物語ではヒロイン・キク(元水颯香サン)として登場。

    物語は3年前に遡る。「マクベス」を彷彿させる3人姉妹(1人は鬘女装の弟)の予言により、死ぬことが定められたヤタロウ。刺客に狙われた場所が銭湯内、全裸のヤタロウ絶体絶命のピンチだが…。想像をはるかに超えるところから武器が、笑える。敵となるヨコハマ市長(寺十吾サン)は、ヤタロウのオリンピック出場をかけたライバル。この男の娘が病床にあり、どうしても金メダルを獲りたかったが。そしてお坊ちゃま(葉山昴サン)はヨコハマ市長によって或る手術をされ記憶がない。執事(中野マサアキサン)という傍観的な人物と彷徨しているが、実は妹がいる。キクが市長の娘であり、お坊ちゃまの妹に繋がってくる。ヨコハマ=横浜らしい「赤い靴」まで持ち出す。

    ヨコハマ市に吹き荒れる砂嵐を守るため、市長にとってメリットのある富裕層が住んでいる地域だけを砂塵防護壁を築く。不要不急の外出は控えるように…どこかで聞いたような文句。自分の言葉で説明しない市長、肝心な内容は秘書が喋り、「その通りでございます」と追認。いろんな場面で現在の日本を揶揄しているようで笑える。因みにヤタロウがヨコハマ(望郷)に行くのは妻の墓参りだが、市長によって壁下に潰されていた。

    ヤタロウは、相手を殺す前に約束事を請け負う。1つは市長の娘、お坊ちゃまの妹との邂逅。実際に会えたかどうかは判らないが、少なくとも心に姿、思い出が刻まれたことだろう。もう1つ、同僚刑事だったモリスケ(中山朋文サン)が松の湯で全裸のヤタロウに仕向けた刺客(若者2人組)。ヤタロウは撃退するが、その際、2人の要望は漫才の上達と披露。「壁に向かって稽古しろ」は孤独との戦い。ラストシーン…ヤタロウとモリスケが漫才ネタを行いつつ、そのままヤタロウは約束を果たし永年の別れに旅立つ。

    舞台技術も素晴らしく、薄汚れた場所を更に際立たせる薄暮の照明、そして印象的なのは目つぶし効果。音響ー効果音はもちろん轟く銃撃音、音楽はマカロニ・ウエスタン調で物語に上手く合わせる。軽快なテンポがアクションを活き活きとさせている。世紀末人情活劇「ヨコハマ・ヤタロウ」は、もっと やったろう というダジャレも許してくれるだろう。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2021/10/02 09:58

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