実演鑑賞
満足度★★★★★
劇場前の「手洗い」。そういえば以前から水道の栓っぽいのが備えられていたが、この活用法があったとは!そして、いざ席に座ると、そこは光触媒でシールドされた空間で覆われている。「ここまでやるか!」、いや、生命と演劇を一義に考える日本で最も安全だろう萬劇場というやつである。
ライオンパーマといえば、前回は訪れた客が予約名を紙に書く無音受付の試みがみられたが、我々の予想を五段階くらい飛び越えていく鉄壁ぶりは健在だ。もう一度述べる。ライオンパーマを観ることは自宅の次くらいに安心だ。
「ネバーダイ!」。パッと聴いた感覚だと方言である。妙訳は「ずっとずっとだい」。たしかに、このご時世、ライオンパーマの女性(※役の設定上)に対する扱い方は九州男児なところがある。けれど、「歌姫」の物語を観れば、そういう性の分担の中だからこそ輝く讃美があったってよいのだと改めて思う。みな、たくましい。
滝村千歌役の彩香はシンガーだ。何曲か生歌を披露してくれるのだが、話の流れと見事に連動している。違和感がない。ミュージカルなどでは「プツン」と途切れてしまいがちだが、なんとなく、彩香の場合は精神世界に惹きつける。
意外だったのは加藤だ。ボケない加藤にかっこよさを、凛々しいシルエットを、その目で目撃した私たちは幸運者であろう。
さて、上野ストアハウスにおける公演時の感想は移ろい巡り合う群像的な「縁の再生」だったが、今回は千歌をめぐる同時代人の「変わらぬ絆」がメインだったようだ。もちろん、通常営業のハードボイルドは影を薄め、コメディも控えめであったものの、だからこそ時折のぞくコンセプトは調和していた。おそらく、月に何回か、ふと、あの光景を遡ることだろう。笑いと感動が同居して。
※追記あり