実演鑑賞
満足度★★★★★
「新作能」とは「古典」に対する謂いで、多田富雄作『長崎の聖母』は2006年初演、ディートハルト・レオポルト作『ヤコブの井戸』は2017年初演。新鮮な体験となった。
シアターXのユニークなコラボ企画で最近目にしていた清水寛二氏が真正の能舞台で堂々とシテの貫禄を滲ませている。「亜流の人」と勝手に認識していたので意外であった。
個人的には昔よく見た能楽堂や屋外(薪能)の古典作とも異なり、演劇観賞者として見た現代能楽集や能のエッセンスを入れた舞台とも当然違う。能の形式にのっとった能楽師による「能」(複式夢幻能)にして、テキストは現代のものであり趣向が盛られている、という形は初めて観た。霊が登場し、舞を踊る。ワキがそれを眺め鎮魂の祈りを捧げる・・この形式が現代の文脈でも生き、「今」に迫る演劇の高揚がある。囃子方、謡い方が作る高揚にこれほど揺さぶられる体験も、初めてである。