中年の歩み『侘しい星、寂しい星』 公演情報 第0楽章「中年の歩み『侘しい星、寂しい星』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    中年だけが侘しく悲しいかは分からないが、多くの人が味わうであろう感情、それを娘の視点から描いた回想もしくは幻想劇。タイトルにある星の在り方は、自分の感情に流されないという客観性を保つための強がりに思える。物語は主に母、娘のそれぞれの観点と親子という関係を描いた3場面を娘が集約する。舞台美術は左右対称で、上手・下手側に場を移すことで それぞれの観点が変わり、それに伴い時々に居たであろう人物が登場してくる。その変幻自在な演出と多様な人物を表現する演技力は見事。但し、技巧的になりすぎた印象もあり。
    (上演時間70分) 【A=女性チーム】

    ネタバレBOX

    セットはベットと窓カーテンというシンプルなもの。基本的に上手が娘(今井美佐穂サン)、下手が母(中村真季子サン)の世界(都邑)。違うのは娘の方に母からの仕送りであろうダンボール箱が1つあること。そこから取り出したのはミニ卓上灯とランタン。

    物語は、場所や時を特定させないが、時々に時事ネタを挟み足元を見せ観客の感情を放さない。娘は、ベットの中から ここはスカスカ星、おはよう こんにちわ こんばんわ と言った挨拶をする。一般(抽象)的な言葉で始まるが、すでに空虚、諦念といった感情が溢れ出す。

    冒頭、母が声掛けし娘を起こすシーンは、自分にも記憶があり懐かしさが蘇る。郷愁を思わせるシーンから、突然、特別定額給付金(コロナという台詞があったか分からない)の申請をしたかという現実を入れる。娘は声優になりたくて上京したが、夢は叶えられていない。母は娘を思い、郷里での職探しをするが、その相手が今井サン(2人芝居ゆえ、色々な人物を入れ代わり立ち代わり演じる)。
    また、物語には父はもちろん、”男”の影さえ出てこない。逆に母・娘に”女”の顔がのぞき出し、母が股を広げ太腿を露わにするなど、何かに未練がある若しくは懇願するような仕草。色々な場面が次々に現れるが、後々、それが走馬燈のように巡る思い出だと解る。

    母・娘(関係)と一概に言っても、その間にある感情などは千差万別で、描くのは容易ではない。だが、現実と虚構を混在させることで、身近(主観)と世間(客観)を上手く表出させ、部分的にでも共感を誘う工夫は巧い。既に母は鬼籍。生きている時には、色々な出来事があり感情の行き違いもあったが、亡くなってみると何て思い出深いのか、そんな侘しさと寂しさが こみ上げてくる芝居である。
    娘の手元にあるミニ卓上灯とランタンは、照明効果だけではなく、母との語らいの媒介ーマイク仕立にし照れ隠しのための間接話法ーとして利用しており、手の込んだ観せ方だ。
    次回公演も楽しみにしております。

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    2021/07/23 17:35

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