ジゼルと粋な子供たち 公演情報 劇団昴「ジゼルと粋な子供たち」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    勉強会(=⭐評価なし)としては優等生公演。無料!!
    作=フランソワ・カンポ、訳=和田誠一

    自然な演出、そして役者の演技力は観てとれた。しかし、物語(フランス戯曲)は時代感覚にフィットしてこない(国と言うか文化や時代が関係しているかも)。もう少し何らかの刺激(毒薬とか良薬等)があって、空気感というか雰囲気や時間が共感出来るような”味”があれば…。
    内容は典型的な不倫をドタバタに扱ったもの。以前、「不倫は文化だ」と言った芸能人がいたが、今でも不倫はTVワイドショーや週刊誌でスキャンダラスに伝える。メディアの露悪的な演出と知りつつも、つい興味本位で醜聞を見聞きしてしまうのと同様か。

    舞台はフランス、その不倫劇はあまりにあっけらかんとしたコメディであり、”刺激”が少ない。当たり前だが、現実感からはほど遠く、あぁ面白かった!で終わってしまい残念(それでも良いのだが、何というかピリッとしたものが欲しい)。
    コロナ禍にあって、ライブ公演はそれだけでも嬉しいものだが、だからこそ一層の満足感を求めたくなる。時代(状況)とともに変化を求め、「苦味」や「皮肉」も混じえ、単なる茶番で終わらせず、現代的な物語へ脚色(勉強会の域を逸脱しない?)出来ると思うのだが…。

    (上演時間2時間10分 途中休憩10分)

    ネタバレBOX

    舞台美術は、この部屋に住む女性・ジゼル(新井志啓サン)のリビング、中央に横長ソファ、テーブル、上手側にサイドテーブル、上手側にハンガーや電話が置かれている。セットは高級感あるものを過不足なく並べ、丁寧な場景作りをしている。場所はパリ、シャトー通り?にこの高級アパートはある。

    梗概…未亡人ジゼルが住むアパートに愛人ジョルジュが突然やって来る。彼は大きなカバンを持ちジゼルに「私たちは旅に発つ、そしてここが目的地だ」と宣言する。ジョルジュは離婚しジゼルと再婚する決意をした。しかしその日、玄関の呼び鈴が鳴るたびに彼の息子、娘、妻、さらには息子の同棲相手、妻の母まで訪ねて来る。誰も知らないはずの愛人宅へ、次々にジョルジュを訪ねてくる。

    ブールヴァール劇の典型的なエピソードである三角関係の縺れに、息子と娘が奇妙に絡んでくる。この風俗喜劇は、観客を楽しませることを第一目的とし、納得ある物語性は希薄。ドタバタとしたドラマが展開し、解決が安易な点はメロドラマと似ている。が、機知と色気に富む洗練された台詞などで楽しませてくれる。ただ中流階級のモラルを皮肉りはするが、正面切っての批判はせず、気軽に楽しむ娯楽劇。フランスのコメディらしい洒落たラストシーンで、上品な笑いと香りに溢れる。但しフランスらしさが、日本のそれと同じかは疑問だ。

    物語は、現実感からは程遠く、両親が離婚しようとしているにも関わらず、子供は自分たちのことを我先に話し出す。兄のジャン=ピエール(18歳)はアジア系の女性と同棲をするための資金を欲す、妹のクリスチーヌ(16歳)は、ここぞとばかりに性放蕩を告白する。子供たちは自宅の電話を盗聴・録音し、父と愛人・ジゼルの艶話を面白がって聞いていた。子供の年齢や立場からすると両親の離婚はやむを得ないと割り切ったとしても、愛人宅まで来て父親に金を強請る、という滑稽さはやはり違和感を持つ。ここでは子供たちの(救世主的)存在が肝であり、その人物像はドライな感覚とウエットな感情が同居しているといったところ。しかし、この人物像が物語の滑稽さに溶け込まず、単に身勝手なだけに思えてしまう。

    フランスと日本という国の違いのせいか、または世代・時代感覚(間隔)なのか、あまりに表層的な物語という印象。勉強会という意味では、先に書いた演出や演技は確かで、他の演目を観てみたいと思わせる。
    次回公演(勉強会も)楽しみにしております。

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    2021/07/17 20:36

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