実演鑑賞
満足度★★★★
つかこうへい作品の中で一番好きかも知れない。従軍慰安婦を使ってこんな芝居を書くとは流石である。「表現の不自由展」に今作を出品して欲しい程。操作された政治的解釈で捻じ曲げられてゆく歴史に騙されて欲しくはない。
朝鮮人慰安婦役の鈴木万里絵さんがとにかく素晴らしい。時間が立つ程にその存在は膨らみ続け、終演後は彼女の事で頭が一杯になるであろう。菩薩のように全ての苦しみを受け入れ過ちを許してくれる存在。ぼろぼろと涙が零れ落ちる客席、この内容を若き女性層がきちんと理解して受け止めている様子が美しい。
開幕からいきなりサビにいくような強烈なスピード感。満州の落ちこぼれ部隊を任された小隊長(草野剛〈たけし〉)、純情な東北の百姓二等兵(尾崎大陸〈りく〉)、従軍慰安婦(鈴木万里絵)の三人の物語。綺麗事では終わらせない肉体を伴った人間観。吐き気がする程醜悪で同時に余りにも澄み切った心を併せ持つ日本人、その矛盾すら引っ括めて見事に具現化してみせた。
ちょっと観てみて欲しい。
「スナック満洲」のチーママ、井上怜愛(れいあ)さんが綺麗だった。(23歳であの貫禄)。