第70回公演「ベンガルの虎」 公演情報 新宿梁山泊「第70回公演「ベンガルの虎」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    御歳72歳の風間杜夫氏が初のテント芝居。アングラ×風間杜夫は化学反応と知的快楽に満ち溢れている。『スチュワーデス物語』からほぼ同じルックスのまま、一向に老いることを知らない。ド迫力語り草になるラスト・シーンも必見、観るなら今しかない。
    3時間三幕(休憩10分×2)。
    『ビルマの竪琴』の続編として始まり、現地で遺骨収集を続ける水島と彼から送られてくるバッタンバンの象牙の判子を待つ妻のカンナ。元中学校の家庭科教師で現在は錦糸町でホステスをしている。しかし水島の妻を名乗る別の女が現れ、困惑したカンナは再会したかつての教え子・銀次と逃避行に出る。

    役者謝肉祭を観ているような狂熱のステージ。
    水島カンナ役の、水嶋カンナさんは終始鬼気迫っている。二人乗り自転車の荷台の上にスックと立つシーンが美しい。(12年前の『ベンガルの虎』公演から役名水島カンナを採って、水嶋カンナに改名。)
    元大駱駝艦の奥山ばらば氏は超格好良い。ずっと観ていられる。褌一丁全身白塗り、182cm の体躯を活かし無法松のような下半身の肉体美で神話のように舞い踊る。この奇想天外な異空間に説得力を持たせる絵力。
    平山もとかず氏(a.k.a iLHWA〈イルファ〉)はプロレスラーTARUを思わせる強面の風貌で鈴木雅之のような美声を披露。
    風俗マネージャーと薔薇族カメラマンの二役、松永健資(けんすけ)氏が凄まじいインパクトで二役とも暴力そのものの強烈さ。
    カンナの母親役の渡会(わたらい)久美子さんの苛烈な印象。松田洋治氏もかなりパンチの効いたキャラクター。全てのアングラを優しく見守るお母さん的存在、のぐち和美さんの安心感(客入れも担当していた)。金守珍(キム・スジン)氏のおこそ頭巾の灰撒き婆ァこと、産婆のお市。室田日出男を彷彿とさせる藤田佳昭氏。矢鱈イケメンな二條正士氏。
    他国籍ホステスに扮した女優陣によるエロい『うっせぇわ』は新宿ゴールデン街に隣接した花園神社のロケーションにぴったりの選曲。
    中嶋海央(みお)氏熱演の流しの銀次、彼の貫き通す純情が魑魅魍魎渦巻くカルマの闇を引き裂く一筋の月光となる。

    1列目2列目と花道脇はビニールシートで客自身が自己防衛。水や灰が飛んで来るし車券の雨も振る。季節柄、虫も多いので注意。

    ネタバレBOX

    ビルマ(現ミャンマー)、ベンガル(今ではインドとバングラデシュに分断された地域)、バッタンバン(カンボジアの州)、羅紗緬〈らしゃめん〉(海外に売られて行った娼婦、今作ではからゆきさんをイメージ)と東南アジアのかなり広い地域を舞台にとっている。 

    二幕は競輪場のレースからスタート。皆既日食が起こり、カンナと競輪選手でもある水島の再会。明治に時は飛び、カンナの母親である羅紗緬の物語と出生の秘密。
    三幕は入谷の朝顔市。水島がカンナを迎えに来るが、月光仮面と化した銀次がそれを許さない。

    唐十郎の作劇は、より詩的な情景、より詩的な台詞を目を瞑って探り当てるかのようにうねうねうねうねと右へ左へ曲がりくねってゆく。物語ではなくたった一行の胸に突き刺さる煌きを求めているかのようだ。劇中何度も繰り返される、羅紗緬(からゆきさん)の叙述が一番胸に残った。

    ラストはステージ上のプールが大きく口を開け側面から噴水状に水が吹き出す中、次々に飛び込んで行く役者陣。いよいよ水嶋カンナさんが飛び込むと屋台崩し。ステージ奥から本物のショベルカーが登場しそのバケットに乗り込むびしょ濡れのカンナさん。重機がゴンドラ宜しくゆらゆら揺れ歌い上げて去って行く。圧巻の終幕。

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    2021/06/15 16:59

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