外の道 公演情報 イキウメ「外の道」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    イキウメの世界も、このコロナ禍の一年余で変わってきたようだ。
    以前は天体の運行とか、宇宙人の襲来とか、SFでも飛び道具のような設定で、現代社会の奥に潜む人々の不確実性を鮮やかに描いて見せてくれた作品が多かったが、今回は、SF的ではあるが、設定はだいぶ変わった。
    舞台は相変わらずの北の小さな町。故郷へ帰ってきて、配送屋で生活している四十過ぎの男寺泊(安井順平)が地元の行政書士事務所で働いているかつての同級生の山鳥(池谷のぶえ)に再会して、全国からひそかに客が来るという町はずれの喫茶店で、店主(森下創)の手品を見に行く。それは個体を人間の中に埋め込んでしまうという手品で、実際に政治家がパーティの会場で、その場で割れたビール瓶のかけらを頭に埋め込まれて急死する超現実的な事件があった。
    手品を見たころから寺泊の周囲に奇妙な事件が起き始める。妻〈豊田エリー〉が美しくなり始め、どうやら、山鳥の弟と浮気しているようでもある。配送する荷物は行き先が分からず、誤配で返送されてくる。配送物の中身は「無」と書かれている。中にはマックロクロスケ、闇が入っていて、そこから漏れ出した闇は時に舞台を暗黒の世界に誘っていく。
    ・・とイキウメらしい展開になっていく。しかし、それは、全社会に及んでいく超自然現象ではなくて、個々の人間の、個人の記憶と認識から始まり、見知らぬ子ども(大窪人衛)が家族と主張して入り込んできたりする。
    SFファンタジーのような、ホラーのような、イキウメ独特の舞台の感触は変わらないが、仕掛けが壮大な宇宙から個人になった。同級生の間の人間関係や喫茶店のマスターの手品など、いままでになかった人間的な味わいやユーモアがあるし、どこか、幼いころ読んだ、小川未明の童話の街の雰囲気もあって、なかなか面白い。
    休演している間にブラッシュアップする時間もあったのだろう、完成度も高い。見終わったあと、あれはどういう事だったのだろうと思い返して、はたと手を打つ楽しみも大きい。


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    2021/06/02 15:23

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