ブレインズ・グラフィティ 公演情報 イベント企画OZ 「ブレインズ・グラフィティ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 実演鑑賞

    満足度★★★

    物語の着想や屋台骨は良いが、いろいろと突っ込みどころが浮かんでは頭の中を駆け巡ってしまい物語に入り込むことはできなかった。
    作品を完成させることは簡単ではない。一本の脚本を書き上げたことは賞賛されるべきことと思っているが、その上で物申したい。本作は脚本家と呼ばれるような人物に添削してもらうべきだ。大人の世界でこういうことが許されるか。自分の経験だけでは世界を書くことはできない。創作するのなら小説でも映画でもドラマでもそれっぽいゲームでも新聞でもいいから知見を広げるべきである。(なんのことを言っているのかはネタバレBOXへ記入)
    作品の帰着点や進展は「よくある」ものであったとしても物語の着想は新鮮だし主人公が止めた歩みを再び進める良い話だった。作品のメッセージもけして悪くない。だが、満足いく出来ではないのだ。脚本も、演出も、演技も、どこか薄っぺらい。これだけの登場人物がいればそうもなるだろう。ひとりひとりをしっかりえがき分けることだけでも大変で、そこから深くもぐるのは至難の業だ。少しひねればもっと良くなる。初演ではなく再演とのことだが、まだまだ伸びしろのある作品だった。


    気になったマイナス点を2つ。
    1.劇場に到着してまず目に入ったのが長蛇の列。開演15分前だった。来場する観客全員がチケットを持たない状態で来るのだからそれを捌くのは難しい。それゆえに開場が開演の45分前だったのだろうが指定席であれば観客は早く劇場に行こうとはなかなか思わないもの。運営や出演者が早めの来場を呼びかけることがあっても良かったと思うし、振り込みで支払った観客にはチケットを郵送するようにしていればここまでの混雑にならなかったのでは。密を避ける、接触を避けるのが良いとされている昨今、現金の受け渡しすらも忌避すべきというキャッシュレスに追い風が吹く情勢の中、見通しが甘かったと言われても仕方がないと思う。
    2.キャラクタービジュアルやパンフレットのデザインが良くない。見る気をなくす。デザイナーを雇うべきだし、もしデザイナーを雇ってこれだったのならばそのデザイナーに再勉強を促したい。それほどの出来である。


    あ、あとですね、公演ページご出演者さんのところに福地教光さんのお名前を追加いただけますか。よろしくお願いします。

    以下ネタバレBOXへ。

    ネタバレBOX

    突っ込みどころはいろいろとあるんですけども。
    まずは月島社長。盗作だめぜったい。劇中で申し訳ありませんでしたって言ってるけど、これは訴訟案件でしょう。書いた人、松岡氏、あなたは、これ(登場人物がパクられる)を許せる程度のものを書いてるんですか? 作家として、想像できませんか? どういう気持ちで創作されていたんだろう……申し訳ないですが分からなすぎて頭がついていきませんでした(個人の感想です)。開発の前に契約を交わすべきだし、自分を救ってくれた小説家をあんなふうに勧誘します??? 正直に言って、月島社長については、いろいろな場面で困惑しました。

    火渡先生のメンタルの弱さ。完璧主義なんだろうけどもろい。これはある。あるけど、火渡先生にまでスポットを当ててるから作品の軸がぶれる。もちろん、先生良かったねの場面にほっこりするし、救いがあるのはうれしいのだけど。観客を困惑させるくらいの強烈さにする必要はなかったかな。

    サンプル5名がなかなかやんちゃ笑。まあこの5名はゲームだと思ってるもんなあ。しかし随所でイライラさせられました苦笑。

    登場人物の中で最も不幸な立場にあると言っていい玲。彼女にもいらつかされるがそれは彼女にとってはここが現実だから。彼女に突きつけられる事実、あまりにも配慮がない。物語の展開のためだろうと思うとやりきれない。要するに、随所に作劇の都合を感じたということだ。

    いい人に見える玲の父親だが、突き詰めればエゴで動いている。陽本は月島社長が夏樹の作品を盗作していることを知っていただろうか。おそらく知りはしなかったのだろう。娘をあきらめきれない思いから出資をする善意の人物だが、彼は知らぬまま盗作という犯罪に荷担していた。
    なお陽本の「融資をします」という台詞には少々の違和感。彼は資金を出すつもりがあるだろう、だが返済を望んでいるだろうか? 「融資をします」ではなく「出資をします」「資金を出します」が適切では? (重箱の隅をつつくような話で申し訳ない)
    あきらめきれなかった娘の元気な姿に動揺しながら嬉しさを隠すような表情。娘が舞台に登場するとその姿を追い父親の表情になる。厳しい父親だったことへの後悔、娘への愛情。そのお芝居が、観客に「いつ何があるか分からない。今を大切にしなければ」と思わせる一端に、しっかりなっていた。

    きらきらしたAI搭載NPCたちとプレイヤーたちが仲良くなっていくなんて素晴らしい着想だし、障がいのあるひともゲームの中ではのびのびと自由に、という開発動機だって現実にもあっていいと思うし。良いところがたくさんあった。あったけれど、起承転結ありきの印象を受けたことと、上記のような困惑があったことで満足度は低かった。いろいろなところを、もっと良くできるはず。演劇の裾野は広い。間口を広げず狭くしたっていい。次回作もきっと誰かに刺さるものを作っていただきたいと思う。

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    2021/04/18 23:07

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