実演鑑賞
満足度★★★★
エーリッヒ・ケストナーの1934年の作品。有能な若者ハーゲドルンが失業中で全く仕事に就けないことが1929年からの世界恐慌の真っただ中であることを示している。しかしそれ以外に何か世相を表す事柄は見つけられなかった。1933年にはヒトラーが首相になっているのだがそれにもまったく触れられていない。強いて言えば、こんな時代でも金持ち連中は優雅に暮らしているのだと告発していると読めないこともないがちょっと無理筋だ。素直に多くの失業者を励ますものだと捕えよう。
こちらの予想と寸分も違わない単純なストーリー進行はどうかと思うが役者さん達は濃い目のキャラを見事に演じていてそちらは十分に楽しめた。
ハンス役の加藤頼さん、横内正さんの「リア王」での忠臣ケント伯の演技が印象に残っている。この舞台でも枢密顧問官の執事という同じような役柄で実に良い味を出していた。