断片/ペール・ギュント 公演情報 劇場創造アカデミー「断片/ペール・ギュント」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    演劇人育成プログラム「劇場創造アカデミー」の修了公演というと随分前、『大いなる平和』三部作(の第3部)を観て以来のことで、二作目。アカデミーの中身も内情も全く知らないので、演目に惹かれて観るには観るが、新たな門出をする俳優たちの晴れ姿にも幾分惹かれている。もっとも「劇場創造・・」なる存在の正体もよく判らない。パンフに紹介された講師陣は所謂「演劇」での第一線の面々多数で、けっこう厚い(新国立劇場研修所には及ばないが)。座・高円寺の態様もそうだが「劇場創造」という名称からして一捻りだ。座・高円寺の指定管理者がNPO法人「劇場創造ネットワーク」と言い、ここの初代理事長、及び劇場の館長を斎藤憐がやった(この劇作家は経営手腕も秀でていたらしい)。斎藤憐亡き今は館長に広告・コンサル畑の人、NPO法人代表はマキノノゾミ。「芸術監督」の方は当初より佐藤信で、館長が変ってから氏の方が劇場の顔的存在になっている。(斎藤憐もメンバーだった)出身である所の劇団黒テントてぇのがテントや独自な地方オルグで「劇場を作る」存在であったというので、演劇=思想の実践、ようは晦渋な印象である(私が観た佐藤信作品:近年の黒テント「絶対飛行機」「亡国のダンサー」、演出舞台は座高円寺プログラムで幾つか)。
    という事を踏まえつつ、また一応「俳優養成所」(的な場)の成果発表である事も踏まえつつ作品を鑑賞。演出は独特でも内容は『ペール・ギュント』であった。『断片/・・』等と命名し直さなくても『ペール・ギュント』で良いじゃん。と。(「断片」化する主体、つまり研修生の個的な何かが反映されているだろうと勝手に予想したのだが割と普通(物語叙述)であった。)そもそもこの作品がペールギュントという超変わった人の「生涯」ではあっても各エピソードは断片と言えそうであるし。
    まあそれはともかく・・舞台を観ながら思いを強くしたのは、コロナ禍という現状では、舞台上のどんな営為も現実との対比が意識されてしまう事である。優れた舞台と思える舞台には実世界との接触点がある。しかしコロナ禍下においては演劇をやってる事自体が「現状へのアゲンストな接触」を含む。
    「ペールギュント」という一人の人間の人生(濃密で波乱万丈なそれとして描写された)を俯瞰する物語には、人間がどんな人生もその人独自の、交換不能(従って価値換算不能)なものであるメッセージ、究極人の運命は人自身で引き受けるしかないものであるメッセージがそこはかと漂う。「自由」という語に集約されるその「人生」のありようが、現在の息苦しさとの対照として意識された。
    舞台の方は数少ない俳優(4人の研修生の内俳優3人と、卒業生が加わって10名程で役をこなし、なおかつペールギュントは場面ごとに俳優が入れ替わる。若い俳優ら(年齢幅はややある模様)は動きの負荷の中で、自然らしい躍動をもって物語を支えていた。

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    2021/03/04 08:07

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