満足度★★★★
喜劇では既存のキャラクターの使い方が難しい。登場させるのは簡単だし、著名なキャラクターだと下手な説明をしなくて済む。便利だが、知られているキャラに振り回されるという事にもなる。
ドラキュラと言うと、森の奥の古城に生きる不死の生命、処女の生き血を吸う、殺すには心臓を杭打ちしなければならない、などなどのキャラクターが知られている。架空の悪役キャラクターでは、ルパンに並ぶ人気者である。
今回の作品では、不死に飽きて早く死にたいと悩むドラキュラをめぐる話で、そこはあまり新味はないが、二幕では、そのために芝居を組むというところが新しい工夫である。しかし、その新しい部分がこなれていなくて、人物も、話も、笑いも渋滞する。新人賞と言うが、作者は既に上演作品もあって、一幕などは手慣れた感じがするが、そこからうまく広げていくところがスムースに進まない。役者も、川端慎二はドラキュラ役を楽しそうにやっているが、ほかの役には役者がなじんでいない。そこが舞台では浮いてしまう。
喜劇は難しいもので、喜劇が旗印のNLTやテアトルエコーはまず本で苦労している。どちらの劇団も喜劇の新人脚本賞を出しているところからもそれはうかがえる。劇としての喜劇は演出、俳優に負うところも大きくすぐれた作品を創り上げるのは時間もかかる。わが国には、三谷、ケラ、宮藤と言う優れた喜劇作家がいるが後続は心細い。いい作品を待望している