満足度★★★★
演劇はシェアするもの。演劇讃歌。日隠bionの岩瀬晶子さん書き下ろしの本作は、covid-19下における演劇界の苦境に対し、演劇人へ、そしておそらくは自分自身へもエールを送っている作品だろう。日隠bionはずいぶん前から拝見しており、人間愛に溢れる作品を楽しんできた。青年座が依頼したのも頷ける。キーパーソンが最後まで登場しない作りが魅力的で、その人物に対する思いを語らせながら、登場人物の人柄が見え、そして変化していく様を味わった。後半の展開は観客を惹きつけた。
最も良かったのは「カズオ……おやすみ。」
言いたいことを言わない、言わせたいことを言わせない、書きたいことを書かない……そこに一番伝えたいことが滲むような気がする。
そう考えると、終盤には、やや説教じみていると感じる観客もいたのではなかろうか。前半の台詞も隙間が多いと思えたし、説明的にも感じたので、再演の際には改善されるといい気がする。
キュートな尾身美詞さんは、その持ち味を遺憾なく発揮し、隠と陽を誰もが抱えていることを提示した。
地方と首都、他国と日本の関係の在り方が、隣人との関係として感じ得る作品。