満足度★★★★
転換なし、音楽なし、セミパブリックスペースで様々な人々がすれ違いながら、その世界が見えてくる。平田オリザのスタイルが貫かれている。音楽については、舞台設定の時代(1988年の昭和天皇のご病気時代)に流行った歌のカセットと、初老の男たちが歌う懐かしの軍歌(!)、「ハイマオの歌」はある。
考えてみれば、平田氏は海外の日本人を書くのが好きだ。「ソウル市民」からそうだったし、新・旧「冒険王」はイスタンブールのバックパッカー宿にたむろする日韓の若者たちだった。「その森の奥」はマダガスカルの研究所。これらは、日本人以外も出てきて、いわば国際性があるが、今回は外国なのに、日本人だけの「老後マンション」で、日本論がいっそう前面に感じられる。
「日本がどこまでも追いかけてくる」とか「帰りたくない」とか、嫌うことも含めて、「日本」をつねに意識している人たち。
2008年初演時の設定を大きく変え、1988年の天皇重態の「自粛」に時代を置き、今のコロナの感染予防の自粛・制限と重ねている。これは見事な設定である。