ラクダ 公演情報 16号室「ラクダ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2020/03/08 (日)

    2018年に私の観劇で年間ベスト5の逸品がトリプルキャストを引っ提げて再々演。

    演出の基本路線は前回の再演を踏襲した印象でしたが、客席も取り込む様に作り込まれた店内装飾は相変わらずの絶品、中盤から終始ヒリヒリする場の空気の作り込みは秀逸でしたねぇ。そして、舞と後藤… 2人の冴えない人間が、それまでの生き方を180°反転させる転機を得て、足掻き、寄り添い、対峙する展開には何度観ても滅多刺しですわ。

    ネタバレBOXに続く。

    ネタバレBOX

    脚本はそんなに変わっていません。 再演で生まれた細かい演出をト書きとして予め盛り込む増補がある程度の変化みたいです。
    ただ… 1回しか観ていない再演で自分があまり拾えてなかった部分を… 今回かなり明確に意識できる様になった気がしますね。

    その最たるものは、やはり舞に生まれる「自己愛」でしょうか。
    再演までは、生まれて初めて実った愛を手放すまいと… その対象を失った後も留まることなく膨れ上がる情愛が… 「狂気」に移りゆく様の激しさに目が眩んで、その奥がよく見えなくなっていました。
    しかし… 舞が次第に… 「恭平を愛する自分」を愛する様になっていくのが目に留まる。散らばった原稿を拾うシーンで、1ま~い(枚)、2ま~い(枚)… と番町皿屋敷の如く原稿用紙を拾い上げますが、おぐりさんで観た辺りから「枚」が「舞」に聞こえる様になった。原稿用紙の中にその生き様を刻まれた恭平を愛でる様に紙を拾い上げながら… その中に舞自身も同化していく。それまでその半生を「自己否定」で埋め尽くしていた舞が(ここら辺すごく共感)、恭平とのコミュニケーションの中でやっと育まれた「肯定感」… 恭平によりもたらされたその肯定は、次第に「自己肯定」となって自立していく。愛する恭平を愛する自分も愛することが出来る様になっていく。当は密やかでささやかな心の動きである筈が、狂気と背中合わせの表裏一体で促成栽培されて、際立っていく、そしてそれだけを拠り所に一人、旅立っていく。やっと舞の最後の心の動きを拾えたかな… と思いました。

    あと、再演の時は私の席からは殆ど見切れていた中央ソファ。
    再演の時からやってたかも知れないけど、恭平の死以降の場転を兼ねた「三上と陽子が踊りながら次の出番に向けて衣装替えとメイクを施す繋ぎのシーン」は非常に興味深かかった。とてもダンサブルで背景としても際立ったし、役者のメタモルフォーゼを間近で味わえる楽しみがありました。

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    2021/01/05 22:09

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