オリエント急行殺人事件 公演情報 エイベックス・エンタテインメント「オリエント急行殺人事件」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    アガサ・クリスティーの1934年の作品。新興の大国アメリカで起こったリンドバーグの長男の誘拐殺人事件(1932)はイギリスでも大きく話題になったのだろう。その事件をバックグラウンドに取り入れ、舞台を中東を走る豪華列車の中に設定するというタイムリーで欲張りなものであった。当時の読者は謎解きと共に二つの異世界への興味を大いに刺激されたことだろう。反面、現在の読者にはその誘拐殺人事件についてはピンと来ないのも確かである。

    オープニングの舞台にはオリエント急行の車体横部分があって並んだ窓から車内が見えている。この車体が上がると1階に食堂車、2階に客室並びが現れ、上方には車輪のオブジェがあって回転し雰囲気を醸し出している。

    原作ではポワロが謎解きを語ったところで終わるのだが2017年の映画もこの舞台も一頻り正義について語る。まあ確かにミステリーはトリックの部分を除けば読むところはないので何か意義を付け加えたくなるのは分かるのだが取って付けたような白々しさは否めない。そこを軽くスルーすれば中々楽しい良い舞台であった。

    観客の平均年齢は50歳以上ではないだろうか。そして開演前にパンフレットを買って読んでいる姿がかなり目立つ。この2,000円のパンフレットは読みどころが多くておすすめである。席は飛ばしなしのベタ詰めだがこの劇場特有の左右の横向き席を除けば9割くらいは入っていただろう。こういう演目はやはり強い。

    途中でダンスが始まるかと思わせるシーンがあったがすぐに通常モードに戻ってしまった。まあこの配役では無理がある。しかしミュージカル「オリエント急行殺人事件」はありだなあと思わせるに十分な盛り上がりを感じた。このことを含めて全体におしゃれで軽いのは主催がエイベックスだからなのだろう。

    *なお、この作品では誘拐殺人事件の犯人は逃げおおせているという前提になっているのだが実際の事件では犯人は捕まり無実を主張したが死刑が執行されている。

    ネタバレBOX

    原作で容疑者の人数は12人、お馴染みの陪審員の数である(*)。さすがにそのままでは水増し感がかなりあるのでこの舞台では数合わせを諦めて適切に減らしている。元々必要性の薄い医師は登場しない。そして本来登場機会のほとんどないアンドレニ伯爵夫人が最初から目立っているのが特徴であり、結末に少しの違いを生じさせる。

    (*) ウィキペディアの「陪審制」によると
    陪審の起源は、少なくとも、カール大帝の息子、ルートヴィヒ1世が、829年に、国王の権利について判断する際、その地方で最も優れた、最も信頼できる人物12人に宣誓の上陳述させるという制度を設けたことにさかのぼるという。別の説もあり。

    登場人物
    エルキュール・ポアロ:名探偵:椎名桔平
    ブーク:鉄道会社の重役でポアロの友人:松尾諭
    アンドレニ伯爵夫人:松井玲奈
    サミュエル・エドワード・ラチェット:悪党:粟根まこと
    ヘクター・マックイーン:ラチェットの秘書:室龍太
    アーバスノット大佐:軍人:粟根まこと(二役)
    メアリー・デブナム:家庭教師:本仮屋ユイカ
    ドラゴミロフ公爵夫人:ロシアの貴族:高橋惠子
    ヘレン・ハバード:超陽気なアメリカ人:マルシア
    グレタ・オルソン:宣教師:宍戸美和公
    ピエール・ポール・ミシェル:車掌:中村まこと

    原作にあってこの舞台には登場しない人物
    コンスタンチン博士:医師
    アンドレニ伯爵:外交官
    エドワード・ヘンリー・マスターマン:ラチェットの執事
    サイラス・ハードマン:ラチェットに雇われた探偵
    アントニオ・フォスカレリ:自動車のセールスマン
    ヒルデガード・シュミット:ドラゴミロフ公爵夫人の女中

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    2020/12/13 04:26

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