ぼくの好きな先生(2020再演) 公演情報 enji「ぼくの好きな先生(2020再演)」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    テーマは「いじめ」である。その問題は今だけではなく、時間(過去)の経過の中に存在する。教師である「ボク」が好きな先生方との語らいを通して教育とは?を ゆっくり 優しく温かく描いた作品。何度か再演している、劇団の自信作だけのことはある。
    (上演時間1時間45分 途中休憩10分含む)

    ネタバレBOX

    劇団の特長であるが、舞台セットをしっかり作り込み、さらに印象付ける仕掛けもある。今回はタイトルの言葉にもある「先生」から、壁面をほとんど本棚で囲い、中央にテーブル、上手にベット、下手にハンガーが置かれている。壁には映画などのポスター…「いまを生きる」「コルチャック先生」、そして「アメニモマケズ カゼニモマケズ」と書かれたものが貼られている。
    中学教師・河合優(千代延憲治サン)、その部屋に居る学生服を着た馬場翔太(真田たくみサン)の2人が主人公。この少年の台詞が「いじめ」の本質を抉り心が痛む。

    中学教師が尊敬するジョン・キーティング先生(いまを生きる)、ヤヌシュ・コルチャック、アニー・サリバン、宮沢賢治、金八先生、坊ちゃん(小説に名前はない)が、始めは世界教育者会議参加のため架空世界や時空間を越えて登場する。そこで中学生・馬場のいじめをテーマとし教育談義を始める。しかし、少年の心は氷解することなく、逆に各先生の問題を暴き出す。実は、この少年は既に亡く(この中学教師の同級生で中学2年の時に自殺)なっており、この中学教師が親友であったにも関わらず助けられなかった、という自責の念が生み出している妄想(亡霊)である。

    既に亡くなったという設定は、他でも見たことがあるが、そこに直接関係のない”ぼくの好きな先生”たちが登場し、それぞれのスタイル(例えば机⇨テーブルの上)で諭そうとする。教育は一様ではない、だから古今東西の好きな先生を登場させ教育談議をさせる。人物の仮想に対し、「いじめ」問題は現実という設定がユニークだ。「いじめ側」と「いじめられた側」という両面だけではなく...解決策が見つけられない難しい課題を、今実在しない人物の言葉を借りて問題提起する。それは観客である自分に投げかけられたものとして受け止めた。あくまで、そして敢えてコミカルにテンポよく見せることを意識した公演。セットの仕掛けという見せかけの奇抜さもよいが、出来ればもう少し各先生との突っ込んだ話し合いを聞きたかった。
    ラスト、自殺した中学生が未来(20年後)の自分にあてた郵便物(テープ録音が少し小さいかも)。それを持って訪ねてきた父親の慟哭。生きている時の親子の距離は永遠の難問であるが、亡くなってからの距離は縮めることができないだけに悔しい、その思いがよく現れていた。そして翔太のことは忘れないでほしいと頼む姿が痛ましい。一方、翔太は20年後の自分へのメッセージ、描いた夢に照れ笑いをしているが、もはや叶わぬこと。そこに命の尊さが描かれる。

    また、河合先生が同僚の田中光一(足立学サン)先生に諭す。かつて自分がいじめたであろう、友人に謝罪の電話を掛けたり、手紙を出す、または直接謝って回わらせる。確かに いじめた側はその行為を忘れているかもしれないが、いじめを受けた側は忘れはしない。しかし、いじめる側はいつもいじめる側なのだろうか。いじめられた、だから今度は自分が弱いものを探しいじめる。そのいじめという不幸の連鎖になっているのでは...。そう考えた時、謝罪を通して受けたいじめの思い出(傷)は、何故自分だけが、という歪な感情に捉われないだろうか。さらに忘れていたかもしれない いじめ の記憶を呼び戻し改めて悔しい思い出に立ち向かわなければならない。その意味では謝罪の時期とタイミングは重要かもしれない。謝罪が上手く効果を発揮することが望ましいが…。もしかしたら自分の了見が狭いかもしれない。

    この公演では理想形のようで きれい事に思えるが、それでも積極的にいじめに加担しなくとも、何もせず傍観していることは いじめていることに等しい。その”無視”した態度も糾弾する。「いじめ」に対する特効薬は、個々人の良心にある、ある種の俯瞰者である「ぼくの好きな先生」はそう語りかけているようだ。
    役者陣の演技は素晴らしく、そのキャラクターがしっかり確立していた。主人公の少年のコミカル、シリアスな演じわけが実に魅力的であった。
    次回公演を楽しみにしております。

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    2020/11/22 20:25

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  • ご来場ありがとうございました😊

    2020/11/27 17:56

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