関数ドミノ 公演情報 イキウメ「関数ドミノ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    めずらしく★5つ。
    イキウメは「散歩する侵略者」の再演から見ているのですが、あれを超える作品はなかなか見れるものではないと思ってました。
    その後のイキウメの作品も見ているけど、短編集が素晴らしかったけど「散歩する侵略者」の衝撃はさすがになかったです。

    でも、この作品で扱っている概念の面白さと、それをストーリーとしてうまく構成した手腕にゾクゾクしました。

    自分は★5つはあまり付けないようにしているのですが、この舞台は久々に5つ付けます!

    まだ改善できる点はあると思うけど、この作品で描いている人間の欲望と無力さ、そして最後のどんでん返しが素晴らしかったです。
    ストーリーで勝負する作品なら、こういった人間の根源を丁寧に独自の解釈とアイデアで描いた作品が大好きです。

    演出はとてもオーソドックスで技巧に走っていない分、演劇を見た事がない人にでも安心して勧められる作品だと思います。
    惜しいのは、これだけオーソドックスにまとめられると、別に演劇でなくても、むしろ映画にした方が面白い作品に出来あがってしまったかもしれない、というところでしょうか。

    観劇予定の方はネタバレは決して見ないでください。

    ネタバレBOX

    ある事故で男性が轢かれた。
    と思ったが男性は無傷で跳ね飛ばされたのは車の方だった。

    その事故を目撃した男(マカベ)は、轢かれそうになった男性の友人(モリオ)が道路脇で「やめろ!」と叫んだ瞬間に車が撥ね飛ばされたのを目にしており、マカベはモリオが「ドミノ」であると確信する。

    「ドミノ」とはどんな望みでも、心に思う事で実現出来てしまうという、正に神のような存在。
    それは期間限定で、本人も「ドミノ」である事は気づかない場合が多い。
    もしそれに気づいた場合は、かつてヒトラーがそうしたようにその力を使って世界を支配する事も考えるかもしれない。
    神なのか悪魔なのか、それはその「ドミノ」が何を思うかによって変わってしまうし、周りのひとの捉え方によっても変わってしまう。

    「ドミノ」であるモリオに好きだった片思いの女性を取られたと思うモリオの友人は彼を「悪魔」と呼ぶ。
    モリオによってHIVウィルスを消滅させる事が出来た男性トロは、彼は「神」だと言う。

    しかし、「ドミノ」は自分がドミノである事は気づいていない。
    実はモリオが「ドミノ」であり、彼によって奇跡が起こされているというのもマカベの心の中で思っていた奇跡であり、マカベが真の「ドミノ」だった。
    彼はその事に気づいていなかっただけで、ネガティブな思考は全てネガティブに実現されてしまう、というのも「ドミノ」の力によるもの。

    世の中には何をやっても上手くいってしまうひとがいる。
    そんな人の陰には何をやっても上手くいかないひと達がいる。
    「自分がうまくいかないのは奴のせいだ」と思ってしまう。

    「ドミノ」という概念はとても深い。
    そして恐ろしい。
    SFではあるけど、これは人間誰もが心に抱いている考えを概念がしたもの。

    その描き方のうまさとドンデン返しの巧みさには舌を巻きました。
    役者さんも、まだ公演が始まって間もないけど、しっかり役を自分のものにしていました。

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    2009/05/10 02:12

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