満足度★★★
鑑賞日2020/11/05 (木) 14:00
座席F列3番
おそらく、観劇に赴いた割と多くの人が、かの「12人の・・・」怒っていても、優しくてもよいのだけれど、を期待していたのではないかと思う。まあ、そうした法廷劇、サスペンスやミステリーではないにしても、題名からして司法制度を皮肉ったりしたコメディや風刺劇。
と、結局どちらでもなかった。何だったんでしょう。時の流行語にもなった(それで、初めて、私はこの漢字を知りました)「忖度」、裁判所が検事や世論に忖度したということは明快なのだけれど、それを皮肉ったり批判したりするのでもない。
検事側に殺人罪の適用が難しいからと予備的訴因を付けることを示唆する(敢えて、顔を立てて命令ではなく、検事側が自発的に行ったとする意図で)ところで、そうした配慮に裁判官の1人が、感情的な対応をする場面があるが、そんな目づらしいことでもないだろう。
題名や題材の解題はともかくも、観客はこの芝居をどう見ればよいというのだろう。はっきり言って、事件についてはわかるが、そこのまつわる情報量があまりに少なすぎで、裁判員の視点で観劇もできないし、裁判員たちも没個性で魅力を感じない。1号や、4号、7号のようなにぎやかしの存在も必要だと思うので否定するものではない。けれど、2号が語る「孤独」、8号が述べる「驚き」は、おそらく加害者の量刑をはかるうえで、重要な展開だと思うのだが、事件そのものが全く見えてこないので、どう受け止めてよいのか戸惑うばかりだ。3号と5号が進行を仕切るのだが、訳ありげな5号が訳ありげなままで、彼女の科会社の心情に対する共鳴が、どこから来るものやらさっぱり?
裁判官同士の確執も何に起因しているのか判らないし。