満足度★★★★
少年ビリーがダンスに目覚め、困難を乗り越え王立バレエ団のオーディションに合格するお話。
困難とはいってもダンスについては易々と上達して行く。私が作者ならビリーは育ちが悪いので優雅なニュアンスが表現できないとか余計な話を入れたくなるのだが、このお話のもう一方にはマーガレット・サッチャー首相と労働組合の戦いがあってそんな時間の余裕はないのだ。そして困難は主にその方面からやって来る。「こんな戦いのときに男がバレエなんかやってる場合か」などと父親を含む周りの人々から非難されてしまう。どうやら作者はビリーの物語と同等かそれ以上にサッチャー批判がしたかったようだ。日本の若い観客にとってはサッチャーって誰?だし、年寄りには何を今更となってしまう。少し無理のあるテーマの貼り合わせに思えるが意外に相性が良くストーリーに躍動感と緊張感を生み出し、3時間(含25分休憩)の長丁場を飽きずに楽しませてくれた。
ビリーのダンスは子供にしてはよくやっているなあという以上のものがあったが、親でも親戚でもない私を感動させるまでには至らない。そんな最初から分かっていることに文句をたれていてはいかんよと思うものの、成熟したダンサーの隙のない身のこなしがもっと観たかったという残念感がやはり大きい。ただしフィナーレの群舞は文句なし。これに匹敵するものをもう一つやってくれたら星5つだったのだが。