満足度★★★★
太宰の作品の中ではなじみのある「カチカチ山」。読んでも面白い作品で、朗読作品としても人気がある。その本文に大枠として、執筆当時の太宰本人と、弟子との葛藤、出演者を見て歌を四曲入れた構成(青木豪)は原作を程よく生かして1時間半の舞台にしている。いのうえひでのりの演出もこの欄の「浦島さん」の評とはだいぶ変わって、よく動き、にぎやかで飽きさせない。出演者も狸を演じる宮野真守。ウサギを演じる井上小百合、それぞれ歌にモノローグに、芝居にと、音との絡みがあるので、気が抜けず大車輪だが、とにかく走り抜ける。
コロナ騒ぎで、人数も少なくてできるものと考えたもののようだが、企画そのものはあまりビレッジらしくない。いのうえ演出は、この程度の舞台ではもったいない。もっとダイナミックで面白い舞台を用意してもらいたいものだ。2.5ディメンションと新感線やミュージカルをつないで、新しい時代のエンタティメントを期待している。