満足度★★★★
共和国軍=正義、ファシスト軍=悪という単純な善悪では割り切れないスペイン内戦の闇をしっかり見据えていた。とくに、共和国軍、人民戦線派にも偏狭なセクト主義や、残虐な殺戮行為があったことには驚いた。そのままだと、ゲルニカ爆撃は、愚かな人間を罰する「神の火」になりかねない。際どい作劇だったと思う。スペイン内戦について教えられるところが多かった。
日本には馴染みのない、当時の複雑な対立関係を割り引くことなく舞台にした、劇作家と演出家の努力に感嘆しました。領主の娘サラ(上白石萌歌)が目覚めていく主筋に、バスク独立勢力の決起、教会・ファシスト側の陰謀をからませています。外国人ジャーナリストの二人連れ(勝地涼、早霧せいな)に、証言者の役割を担わせ、さらに、サラの出会う若者(中山優馬)に、重い秘密を背負わせている。重層的な芝居でした。それらの美談も醜聞も、善も悪もすべてをたたきつぶす爆撃場面は、抽象的ながらも、イメージ喚起力が強く、圧倒されました。
ただ、パルコ劇場の間口が大きすぎて、芝居のサイズとはミスマッチだったかな。