満足度★★★★
非情な歴史と、それを超えて手渡されていく人間の真心を感じさせる秀作舞台でした。最初、殺された看守が暴力で囚人を支配する鬼姦手と言われると同時に、「本の虫」だったというので、「アレッ?」と思います。その謎が一歩々々解明されていく。殺人事件の犯人より、こちらの謎の方が私には面白かった。シェイクスピアの「薔薇の名前は違っても、香りは同じ」というセリフを、「創氏改名」を強いられた朝鮮人の立場から「名前の重要性」という意味に、解釈を逆転させるやりとりが面白かった。原作にあるということだが、元が舞台の名場面なので、新解釈を舞台で見るとまた格別。
葛西和雄さん、広戸聡さんら青年劇場の看板俳優たちはもうおなじみですが、ユン・ドンジュ役の矢野貴大、看守杉山役の北直樹、看護師の傍島ひとみがよかった。有望な若い俳優を知ることができたのも収穫だった。