星をかすめる風 公演情報 秋田雨雀・土方与志記念 青年劇場「星をかすめる風」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2020/09/18 (金) 19:00

    座席1階

    若くして日本の刑務所で獄死した韓国の国民的詩人、ユン・ドンジュの物語。青年劇場に初登場となる温泉ドラゴンのシライケイタの脚本・演出ということで期待して出かけた。
    福岡刑務所で鬼と恐れられていた暴力看守が殺害される。看守がきていた服からは一編の詩が書かれた紙が見つかる。所長に殺害犯の特定を頼まれた若い看守が収容されていた朝鮮半島出身の罪人たちの取り調べを始めた。「あんな暴力男に恨みを持っていないやつはいない」との供述が続出し、犯人は簡単に割り出せたと思われたのだが。

    舞台は休憩をはさんだ後半に大きく動く。先の戦争中、朝鮮人たちを多く収容していた刑務所という極限的な舞台設定で、人間の優しさ、温かな心の動きなどが随所に顔を出すのがとてもいい演出だと思う。そのものは出てこないが、塀の外と中の凧揚げ合戦は、客席の想像力を膨らませる舞台設定だ。誰も見ていないのに、外で凧を揚げているのが小学生くらいの女の子という人物設定もすんなり受け入れられ、その心の交流に想像が膨らんでいく。シライ演出の妙だと言える。

    青年劇場の演目では反戦劇が多く、今回もほぼ同じ方向性である。だが、シライケイタの劇作家としての、あるいは演出マインドがいつもの作品とは違うテイストに仕上げ、客席にこれまでとは違う風を吹かせたと思う。カーテンコールの拍手にそれを感じた。秀作だ。

    ネタバレBOX

    看守殺しの真犯人は、意外なところから判明する。当時の九州帝大が人体実験をしていたかどうかは知らないけれど、いかにもありそうという設定。最初に刑務所に帝大の教授と看護婦がやってきたときに「何かあるぞ」と感じなければならないのだが、その登場があまりに自然だったために、どんでん返しの伏線をつかめなかった。演出がすばらしいのか、自分が鈍感なのか(笑)

    ラストシーンに近いところで出てくる詩の朗読には、心を揺さぶられる。泣きそうになる心を抑えるのに精いっぱいだった。ただ、字幕が舞台の凸凹の部分に当たって読みにくいのを再考してほしい。

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    2020/09/19 10:38

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