ツバメの幸福 公演情報 ツツシニウム「ツバメの幸福」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    「幸福とは何か」、捉える視点によって異なる問いかけが面白い。精神的な満足による充実感、物質的な充足感、そのどちらが幸福か…計算ずくでは解らない。テーマの問いかけは分かる。しかし演出は、箸休め的な効果を考えたのかもしれないが、敢えて笑いを誘うような観せ方をしており、自分は好まない。真摯な問いかけを前面に押し出す、そんな意図が感じられるだけに全体的なバランスを欠いたように思える。一方、照明・音響等の舞台技術は印象的で巧い。それだけに少し残念。

    コロナ感染防止対策のため、自席の前方以外をビニールシートで囲っているため見難く、また閉塞感があるのは仕方がないのだろうか。カーテンコールで、「演じられることが当たり前だと思っていたが、コロナ禍では上演することすら難しい」と…。感染防止を図りつつ、観客に いかに心地良く観劇してもらうか、その観劇環境のバランスを保つのも難しいようだ。
    (上演時間1時間40分)

    ネタバレBOX

    舞台は、金糸を絡ませた白布を何か所かに垂らし、夢幻的な雰囲気を演出する。中央には台座、そこに「幸福の王子」が立像する。
    公演は「幸福な王子」(オスカーワイルド)の内容を順々に展開し、脚本に目新しさは感じられない。どちらかと言えば、舞台技術が印象的である。

    さて、「幸福な王子」は子供の頃に読んでいるが、その時と大人になった今ではたぶん感想が違うと思う。自己犠牲による他者の幸福…それ自体は否定しないし、ある意味貴い行為だと思う。幸福な王子の自己犠牲の精神その行為が、自分では到底真似することのできないと思った時、子供の時であれば単なる乾いた教訓話ではなく心打たれる物語としての印象が強いと思う。

    しかし、大人になった自分がたとえ同意できたとしても、同じ行為はできない。それが人間臭さ、もっと言えば正直な人間らしさではないだろうか。人それぞれの思いの度合いによって感じ方が異なる。公演として、原作の寓話性は伝わるが、あまりに忠実(真面目)な描き方で芝居としての妙味に欠けているように思えたのが残念。同時に物語の真摯さと演出の笑シーンにギャップを感じた。
    次回公演を楽しみにしております。

    0

    2020/09/11 18:41

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大