満足度★★★★
久々に羽衣妙ージカルを観たが、最も完成度が高く感じられたのは何故か。総勢15人全てにメインキャストとなる小エピソードがあてがわれ、10個程あったろうか。曲に乗って描かれる色恋にまつわるエピソードは、人間と小動物が半々位。曲+歌には好みもあるが場面に即しており、秀逸なものが幾つか。振りと曲のマッチングもさすがだが、踊り手もいい。
今回の特徴は「口ぱく」との事。最初離れた男女が呼び合う声に違和感あり、奥の女性が生声、手前の男性がマイクを通したこもった声に聞こえ、確かに喉も枯れていたので窮余の策かと思えば、他もマイクの声である。そこで「なるほどステージ前面では録音を使い、感染症対策としている」と納得。だがよく見ると殆どが口パクである。
場面は音曲とダンスが基本構成要素なので、歌は音楽に乗せて録音できるが、ただの台詞は合わせが大変である所、よくやっていた。それにしても録音は声のテンションと身体状態とのギャップを生むが、臨場感ある録音の声に身体が付いていく。稽古の賜物か。またエピソードが少人数ごとなので稽古参加人数も制限できたに違いない。
さて今回感じた優れた点は恐らくこの「口パク」が理由だ。というのも生声であの動きを全力でやるのは無理である。録音だったからこそ身体パフォーマンス(口パク込み)に専念でき、質を高めた。コロナ対応のためのアイデアが舞台上でもうまく機能した訳である。演じ手と語り手の分離は宮城總のお家芸だが、この手法の利点に通じる。
糸井氏演出による「摂州合邦辻」の再演も嬉しい。