満足度★★★★
コンパクトながら心にしみるミュージカルでした。福井晶一演じる父・マックラムのクライマックスの歌がいい。亡妻とのなれそめを歌う「セシリー・スミス」、そしてベルディ「椿姫」から「乾杯の歌」。オペラは苦手という無骨な男も、好きな女性と見るオペラは別。「何を聴くかより誰と聞くかよ」の歌詞がしみます。「人生は誰と歩くかが大事」というセリフもよかった。二人の女優の歌もよかった。狂言回しの原田優一が、姉妹の母親役、怪しい女占い師役、その他を当意即妙に演じ分け、コミカルにテンポよく物語を進めて、飽きさせない。芸の幅が広くて感心した。
最後の停電の日に、停電のおかげでマックラムは命を救われ、ミリアムの受けた占いの「527」の本当の意味も明らかになる。
子供のハロルドが停電を怖がった時、機転の利く母親がやった、目隠しして10数えるというおまじないにも、人生の智恵があった。目隠しの闇に比べると、停電しても少しの明るさが強く感じられ、怖くなくなると。光を感じるには「闇」を知らねばならないということだし、もっとる来事を考えれば、日常の幸福を感じ取ることができるということである。
「停電があるから光が必要なように(?)、闇があるから希望が必要だ」という科白はベタな分引用しやすいが、上記のおまじないの方が深みがある。