満足度★★★
「とおくはちかい」・・案内された客席のライトが暗く、「被災地の旧友の部屋を訪れた時の会話」とのパンフの説明を読めていれば、「この話の先に何があるのか」の疑問符に意味がないと悟り、それとして観る事ができたのに・・と悔やんだ。だが何にせよ声が小さい。聞こえるか聞こえないかギリギリを狙う事で観客の集中力を引き出す戦略は、結果的に聞こえなければ意味がない。リアルな小ささでなく、敢えての小ささを感じ、その無意味さに苛立った。特に聞いてほしい話題でもないから聞こえなくて良いのであれば、やらなくて良い。
「ここは出口ではない」・・これも声が小さい。男女2名ずつ4名だが女性1名はタブレットのリモート出演。男の彼女(または妻)で、男が台所で物を探そうとして女が「見せて」とタブレットを台所に持ち込むよう指示し、探してやるという事をやっているので、芝居の中でも「リアルにリモート」の状況だと分かる。が、やはり本来は酒の場に男女2組が居る臨場感をベースに書かれた本だろうと思われ、もう一人の女性が実は幽霊で、という意外要素が普通にリアルな場で起きている落差を楽しみたいところ、顔も姿も見えないリモート人格の参加はやはり存在感も半分。
で、その彼女がタブレットから発している結構大きな音量に対して、男がまた「ギリギリを狙う」小さい声を出すのである。普通相手が出してる声量に合わせた会話になるだろう、と突っ込みたくなる。
昨年アゴラ劇場を予選会場として2組を利賀に送り出した「利賀演劇人コンクール」で、優秀賞をとった中村氏であるが、本年度のアゴラ劇場の幕開け公演は、地味なものになった。