満足度★★★
。歴史のある劇団が、この事態の中で公演を打つというのはご苦労なことと思う。
しかし、今回の公演は、空転した。差別社会を主題にした小説を原作にしているが、学校差別、在日差別、家庭内不和、など日常的な差別が次から次へと出てくるが、脚本の扱いがどれも型通りで、この劇団が得意な「真摯さ」がない。あるいはそれを避けて今風を狙ったたのかもしれないが、柄にないことをするものだから、どこまで行っても型通りを下手に上塗りすることになってしまう。昔、と言っても二十年位前にふるさときゃらばんという劇団があって、生活問題を素材に元気が出るように、としきりにやっていたが行き詰った。こういう問題は作り物でやるなら、隣の劇場でやっている「赤鬼」くらい徹底する力量がないとお客も納得しない。コロナ版だから客席も百くらいだがそれも七分の入り。佐々木愛も劇団を背負うなら、座長顔見世みたいな出方をするのではなくて、自ら主演してこのさい「おりき」をやってみる(あまり賛成しないが)とか、差別なら「サンダカン」とか「親不知」とか、こういうものの方が劇団の独自性が出てよかったのではないか。26人も役者が舞台に乗るが、この本を面白くさせるパンチのある役者がいないのも寂しかった。