満足度★★★★
今ダルカラが劇場公演を。。と出掛けたら一人芝居だった。しかも谷氏自身による。上演は60分。存外濃いコンテンツに満足。ゆったりした客席にも慣れてきた(興行側は大変だろうが)。
配信もあると聞いたが、映像向きと思われる「パッケージ」として完成度のあるもの、起承転結が明快な演劇らしい演劇ならともかく、「アンチフィクション」の題名から想像されるチャレンジングなのは狭雑物無しで見る(劇場で見る)選択肢以外思い付かなかった。
病床の別役実氏が名取事務所(ペーター・ゲスナー演出)に書き下ろした「背骨パキパキ」を思い出す。結局出て来たのは戯曲というよりエッセーのコラージュのようなもので、作者の呟きのような文から夢想された場面で構成された舞台は不思議な趣きがあった。今回のアンチフィクションも作者の呟きがベースであるが、「全て本当にあった事、本当に起こる事」との前置きの真偽が揺らぐフィクション性高い後半のコンテンツまで、コロナ禍下の劇作家の生態という内容は、それが真実でも虚構でも、単純に面白かった。最初に「真実」を謳う事は必要だったろうが、俳優の体は舞台の時間のそれであり、演劇のそれであった。