満足度★★★★
「mask」をテーマにした短編集。当然、ウィルスや花粉などを防ぐ用途に使う“アレ”がお披露目されるが、それだけではない。時事的でありエッジが効いているが、劇団の豊かな発想もオンパレードとなっており、本質を楽しめる。
ただし、欠点を指摘しなければならない。それは表情を読み取れないことだ。このことは感染症法予防の対策をして上演する未来の演劇において、やや重い課題だと思う。つまり「ニューノーマル」を「ニューノーマル」にしてはいけないのだ。今回は時節柄、文化と離ればなれにさせられた観客の「今」にトキめいたが、こうした試みは奇をてらっているから価値が生じるのであって、持続することはない。そのことは表現者も理解している。
第2話の物語における女性社員のやりとりには笑ってしまった。緊迫感のある現場、それでも変わらない ふとした一コマが、滑稽さを増幅させている。