HOMO 公演情報 OrganWorks「HOMO」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    絶滅する人類の三日間、を踊った。
    客席と地続きのステージは薄暗く、人の気配が漂い、緊張感に包まれる開場時。そして“人類”という大きなテーマ。一歩足を踏み入れた時から作品にかける思いが伝わるほど、劇場内には静かな熱量が漂っており、それはダンス公演だからこそかもしれないと感じた。それはつまり、この場が身体表現の空間であることを実感することでもあった。

    演劇のように配役(カテゴリー分け)が当日パンフレットに書かれており、詩が綴られている。読み飛ばしてから観はじめたらもったいないとも思える情報が、さりげなく手渡されていた。

    ネタバレBOX

    踊り、というよりも、動く、傾く、重なる、蠢く、という印象。身体表現というよりも、身体の集合体をつくっているよう。表情の筋肉ひとつひとつ、喉の奥から落ちてくる声。それは一人の人のものではなく、複数名が重なり合い、「ヒト(HOMO)」となっていく。また、美術はDNAのようにも見える。空間全体も作品を通しても、詩的というのがいいのか、文学的というのがいいのか、もはや考古学的というのがいいのか。「2001年宇宙の旅」のような壮大さは、時として人類の歴史と同じく観るものを呆然とさせてしまう瞬間がある。プラネタリウムにいるような感覚に近いかもしれない。そのあまりの大きさに、興奮する人もいれば、力が抜けていく人もいるだろうし、余裕の有無によってはもしかしたら窮屈さや落ち着かなささえ感じるかもしれない。ただ、目を凝らせばそこには、生々しさと無機質さの同居がある。

    この公演により、カンパニー主宰である平原慎太郎さんの作品に合うダンサーの特性が際立ち、広がったのではないだろうか。とくに出番も多かった渡辺はるかさんは、人類と新人類にかかる橋のように、新鮮さとのびやかさがあった。これから、このカンパニーが伸びていく未来の枝葉を見ているような瞬間もあった。作品としては完成度を追求しているのだろうけれど、カンパニーとしていろんな可能性がありそうだと感じられるのは、プロデュース公演とは違う面白さだった。

    人類(ホモ・サピエンス)の旅を描いた「HOMO」。あえて抜いたのだろうが「サピエンス」とはラテン語で『賢い』。では、賢くない人とはなんだろう……言葉による物語とはちがう、身体と空間による物語を堪能した。

    0

    2020/04/30 19:33

    0

    0

このページのQRコードです。

拡大