朗読劇『灯喬月塔』 公演情報 LUCKUP「朗読劇『灯喬月塔』」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

     天使の長が噛みがちだったが、神の使途だから洒落のめし、様々なことが初なので華4つ☆から、ご祝儀で5つ☆)

    ネタバレBOX

     今作の扱っている問題は、現在世界中で起こっている移民差別問題と直結する。天使と悪魔という2元論は、その地に根を下ろして生活してきた地元民に対する移民と考えられるし、一応人間に対する言及はあるものの、実質、物語には関係ない点は、我ら人が神仏を仮構する如く人類を仮構しているのと拮抗する。また運命論によって予め決定された生まれ(悪魔として生まれるか、天使として生まれるか)は、変更できない。これは、いつ、何処に、誰の子として生まれるかは子供自身に決定できないのと同義である。この点も我々、現在、現実に生まれ生きている人間と同じである。
     人類は科学を進歩させ、今や天使も悪魔も人間の支配下にある。とはいえ人間も未だ輪廻転生の領域迄自由に操れるという訳ではなく、魂を創造することができるのは天使のみ。そして駆除できるのは悪魔のみなので自ずと役割が決まって世界は三つ巴の特性力学の中で拮抗しつつ動いている。とはいえ生きて動く現実の力学では、科学技術に勝る人間が優位なので2000年ほど前迄は互いに戦闘を繰り返し、互いに殺戮を繰り返した天使VS悪魔の間にも協定が結ばれ物語の時代には互いの居住空間の間に通路が開かれ行き来できる状態だ。実際、悪魔が天使界に、天使が悪魔界に居たりもする。
     一方、この時代、この空間にあって尚はみ出したい、決まり切った運命・宿命から自由でありたいと望む者達は矢張り存在する。悪魔の側にも、天使の側にも。
     魔王からそのポテンシャルを期待されている若い悪魔が居る。仮にAと名付けよう。彼は天使に成りたかった。然し生来の内気が災いして中々実行に移せなかった。そんな彼を、遊び半分、本気半分でずっと見ていた悪魔が居た。同世代のBだ。2人は友愛関係にあった。BはAを手助けしてやると約束し、2人は天使界へ出掛ける。そこでは天使の長Cが、後進達の指導に当たっていた。良い魂を授ける為には、魂を生み出す天使自身が高潔であらねばならない為、日頃の精神的鍛練が極めて重要なのである。だが後進達は、この指針に大きな不満を持ち、講義をフケル、出席しても一切身に付けるつもりが無い。然るにCは、分け隔てが無い性格でAの望みを聴き、Aの望みが天使になりたいことだと聞くと、Aを悪魔から天使にしてやることはできないが、かつての闘争で壊れてしまった月明かりの代わりに建てられた月塔の仕事は、本来天使のやってきた仕事故、良かったらやってみないか、と言ってくれた。月塔は天使の魂を1日10人分消費して生命エネルギーによって夜の下界を照らしているが、命の重みを知るAになら任せることができる、と信じた訳だ。月塔の操作室は最上部にあるが、階段は5千段、協定以降、悪魔を消去することのできる生命エネルギーは10%程度に抑えてあるものの、悪魔にとっては矢張り負荷がある。Aは毎晩、この塔の頂きに上っては務めを果たし、満足も得ていた。然し天使界の問題児達がAを追い出す為月塔の操作部品を外したりして故障させ、追い出しを図った。
     ところで、今作には、もう一つの層がある。魔王とA、魔王とB、魔王と不良天使の1人、Dとの関係である。種を明かせばAは魔王の息子、優しいAの潜在能力を開花させる為、魔王はAが天使界に入ることに目を瞑り、逐一Bに様子を報告させていた。AとBは本当に友達であるが、Aは魔王の子であることを明かしておらず、Bは監視の密命を帯びたことを明かしていなかった。Dはかつての闘いで悪魔に父を殺されたことを恨み、復讐を誓っていた。為にA追い出しにも加担していたのである。Dは決して言ってはならぬことをAに言った。生まれて初めて心底怒ったAの持つマイナスエネルギーはDを殺めてしまった。そこへ現れたCは、立場上及び矢張り抑え切れぬ感情からA,Bを追放してしまった。地獄に戻った2人は魔王に呼び出され、Aは本心を訊かれるが己の潜在能力を使う気持ちの無いことを宣言、父に不要と宣言され命を奪われた。先にAに殺されたDの魂は生まれ変わって悪魔になることを選択、地獄へ来ていた。父の復讐を果たす為に。(魂が召喚された時に悪魔を選ぶか天使を選ぶか問われ、魂自らそれに応えるので魂は生じた時点で既に意識的だということになるが、父の復讐という一念が例外的に強く思念として残っていたという解釈も可能、そして続く展開への布石でもある)
     その後久しぶりにBが、天使の長、Cに会いに来た。殺されたAの最後の様子を知らせに。この時、追放したことを後悔している彼女が寂しさを漏らすとBは「Aの弟である」かのような言葉を漏らす。ジョークだと笑ったものの、この辺りの余韻も含め物語を深くしている。(当然、AとCが憎からず思い合っていたのは、それまでに描かれていた訳だから)要件を済ませるとBは地獄へ戻った。殺されたAの魂は輪廻転生の輪の中からCによって召喚された。悪魔になるか、天使になるかの問いを、Cは発しない。代わりに彼女が問うたのは、Aの名であった。Aは、悪魔であった頃の名を名乗るが、これがただちに悪魔を選んだことにはならない終わり方である所がグー。(幕)

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    2020/03/30 16:34

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