ミュージカル「ナミヤ雑貨店の奇蹟」 公演情報 ミュージカルカンパニー イッツフォーリーズ「ミュージカル「ナミヤ雑貨店の奇蹟」」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    悲運の中劇場ミュージカルだ。
    リアルな人間感情をしっかりと持ちながら、ファンタジーの世界をミュージカルで成立させるのがいかに難しいかは、いくつもの事例が示している。これはまれにみる成功した中劇場ミュージカルなのに。
    原作は映画にもテレビにもなった人気作家東野圭吾の連作短編集。廃業した雑貨店にたまたま侵入した三人の若者の発見する過去・未来の人々の手紙という枠の設定だけは同じだが、連作だからそれぞれ趣向が違う。これを一つの2時間前後に舞台作品としてまとめるのは容易ではない。初演(2017)は見ていないが、今回の再演では、その経験を生かして原作をうまくまとめている(脚本・大谷美智浩)。原作を多く使いながら、非常に長い映画の脚色に比べると実に手際がいい。しかも、小説の主題でもある、挫折した人々に寄り添う優しさだけでなく、人生の歳月や世代への感懐のような表現しにくい(通俗に落ちそうな)領域まで組み込んでいる。
    音楽(小沢時史)はミュージカルの生命線だが、巧みに作品の基調を作っている。さらにねだるとすればファンタジーなのだから、もっと奔放に歌い上げるところがあってもいい。メインの二曲は少し趣向が近すぎる
    初演は劇団の劇団内公演のような形で上演されたようだが、再演では、ゲスト出演者も招きレベルアップしている。ベテランの石鍋多加史(雑貨店主)と、若者の一人を藤原薫の二人が、役どころにはまっていて舞台が締まった。なかには、うーんという人もいなくはないが、青年座から招かれた磯村純の無理のない素直な演出にひきだされたのか、皆がこの上演に向かって纏まっていることが感じられる。見ていて上手下手を超えた爽快感がある。
    だが、この、久しぶりの俳優座公演はもろにコロナ騒動にぶつかった。企画でも若干は考えられたであろうが、一つのエピソードの軸になるオリンピックも延期が決まった。どこまでもついていない、のである。
    外出自粛の首都の六本木の土曜日のマチネは三割がやっとという入りだったがフィナーレに並んだキャストの顔を晴れ晴れとしていた。手を抜いたところは全くなかった、ぜひ、時宜を見て再再演を期待している。

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    2020/03/28 23:14

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