スター誕生 公演情報 ミュージカル座「スター誕生」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     当時の誰をデフォルメしているかが良く分かるし、海外の著名な作品からも原作や海外公演を示唆する指標を鏤めてあるので、様々にイマージュが広がり楽しめる。(華4つ☆)

    ネタバレBOX

     或る意味無論嘘である。皆が同じ歌を歌えた、とか。んなことある訳が無かろう。無論、表層しか生きていない大多数の日本人には当て嵌まる。
    一方、同じ時代“頭脳警察”は音楽的には大したことは無かったものの、当時日本で間違いなくトップクラスだった(自分はトップだったと考えている)“ハッピーエンド”と同じライブハウスで演奏しており、頭脳警察の熱狂的なファンも居た。釜には憂歌団が居て、ブルースとはこういうものだという歌を歌っていたし、無論関西で憂歌団のライブは矢張り熱狂的な支持を得ており、屋根に三ツ星が描かれた西部講堂でも何度もライブが行われた。関東の著名某大学の映画祭などでは秋吉久美子が人気絶頂で彼女が登場するシーンでは久美子コールが余りに激しく、台詞が全然聞き取れないという状況であった。要は、鍋も釜もぶちまけて上を下への大騒ぎをやらかしていた沸騰の時代であったということだ。
     ところで、稽古という言葉がある。「稽」の字義は考察するということであるから稽古とは、古(いにしえ)を考えることに他ならず、これは東洋(殊に中国)の堯や舜の時代を理想とみる思想に通じる。こういった日本文化の古層にあるもの・ことがこの国の芸の根底にあって、芸術ではなく芸道を追求する点にこの国の狭いが高さもある伝統文化の限界もあるだろう。今作の根底に横たわるスターシステムの頂点・スターとアーティストとしての歌い手の根底に存する暗渠は、このように決定的な歴史・文化・哲学の西洋との乖離である。我々は、このような矛盾の中で生きているにも関わらず、殆どの人がこの矛盾に気付かず、当然のことながらアウフヘーベンすることなど思いもよらない。今作で多用される、本歌取り的手法は、この辺りの矛盾を技術的に迂回する方法でしかないことが、この国を真に民主的な発想や自由の概念から遠ざける文化的既成なのだと考えられる。無論、観客の評価は、間の取り方や、阿吽の呼吸の見事さ、雰囲気を実に上手く掬い取って形にしていることに対して向けられるから、本物の哲学を欠き、表層に留まらざるを得ない。そのような文化的基底を晒して見せている点が興味深い。

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    2020/03/22 13:27

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