ダンシング・アット・ルーナサ 公演情報 劇団俳小「ダンシング・アット・ルーナサ」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

     観客の心構えとして、今作の見方は2つ。(華4つ☆)

    ネタバレBOX

    1936年~39年に掛けてのアイルランドvsイングランドの歴史・宗教・経済・政治状況総てに通暁しているか、無論、フランコに対して立ち上がった義勇軍の歴史については常識として知っているだろう。もう1つは徹底的にバイアスを排除して観ることの2つである。
     描かれている一家は、カソリックだから被差別者である。差別者はアイルランド人口の約3分の2を占めるプロテスタントである。一家が貧乏なのは、無論差別された結果でもある。5人姉妹が未婚のまま一緒に過ごしていることの不自然は、無論狭い地域共同体の中で他人の好奇心の対象とされている。それでも辛うじて体面を保っていられるのは叔父・ジャックがウガンダでハンセン病患者の為に生涯を捧げている神父だからであり、長女・ケイトが教師だからである。然し末の妹・クリスは妻子ある男の子を産み一家で育てている。極めて微妙なバランスの上に成り立つ碓氷の上の生活が淡々と描かれているので、差別・被差別の実態も滲み出るような形で実生活に近い為、日本人には退屈に映るかも知れない。つまり社会に於ける階層分化の内実を普段から見据えようとしない思考法しか採らない主体には、脚本自体は普遍性を具えているにも関わらず本質を捉えるイマジネーションを湧きあがらせることができない。この問題は、日本人の特質である訓練された唾棄すべき白痴性にある。自分の頭で考えることの出来ない人にとっては、唯海外の、ど田舎の日常が淡々と描かれているに過ぎないであろうから。ウガンダのハンセン氏病ケアに人生の殆ど総てを捧げたジャックのアフリカ理解の深さも殆どの日本人には残念乍ら分かるまい。

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    2020/03/03 14:21

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