満足度★★★★★
いやあ楽しい!シェークスピアの全作品に触れるというお遊び企画ではあるのだが、しっかりとした物語になっていて、さすがは井上ひさしと感心した。そこに宮川彬良の音楽が重なったところに、高橋一生、浦井健治という人気と実力を兼ね備えた役者さんが登場するのではこれ以上の贅沢はない。
最初は「リア王」と3人の娘のお馴染みの場面。ここでは天保12年(1841年)のヤクザの親分、鰤の十兵衛(辻萬長)の跡目相続である。アホ真面目な三女のお光(唯月ふうか)が弾き出され、長女のお文(樹里咲穂)と次女のお里(土井ケイト)で縄張りを分割して受け継ぐ。そのとたん、長女の夫の紋太と次女の夫の花平が争うようになる。これは「ロミオとジュリエット」のモンタギュー家とキャプレット家ではないか…。以下どんどん書きたくなるが自粛。105分+20分休憩+95分と長いが全然飽きない。
ここまでの役者さんも実に良い味を出しているが梅沢昌代さんの明るい魔女風老婆も嬉しくなるような怪演である。そして進行役の木場勝巳さんの変幻自在のうまさにはあきれるばかりだ。
この場面はシェークスピア作品の何かを考えながら観るのは実に楽しい。私は有名どころの「リア王」「ハムレット」「オセロ」「マクベス」「ロミオとジュリエット」「リチャード三世」くらいしか分からなかったが、通の人は一つ一つの動作にも連想が湧いてくるのだろう。もっともそういうことを一々考えなくても、しっかりとした衣装、美しい舞台装置もあって絢爛豪華な世界をたっぷりと楽しむことができるだろう。文句なしのスタンディングオベーション、絶対のおすすめ。